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「神経内科学・王道の会★」体験記

先日、弘前で開催されました日本神経病理学会学術集会に参加・発表してきましたので、その様子をレポートします。とても充実した実りの多い会となりまして、なが~いレポートとなりますが、最後までお付き合い下さいませm(__)m

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本学術集会のテーマは「神経学の原点としての神経病理学」です。臨床医学における病理学的診断の重要性は、医師なら誰もが認める所ですが(病理診断はどんな検査法より診断力が高い)、 特に多彩な病態を特徴とする脳神経領域においては、その重要性は更に増します。さらに、いわゆる難病と言われる病気の多い神経疾患では、その病態解明や治療法開発につながる大発見は神経病理から得られたと言っても過言でなく、まさに「神経内科学の原点であり王道」なのです。私、本学会への参加は初めてとなりましたが、学会会場には顕微鏡が沢山並ぶ、いかにもサイエンス&向学の会である事は知っていまして、興味津々で参加する事となりました。

第57回日本神経病理学会総会学術研究会
http://www.procomu.jp/jsnp2016/

岐阜から会場の弘前までは約900km!、予想通りの長旅となりました。勤務を慌てて終えて病院を出たのは4時過ぎでしたが、弘前駅までは青森空港からは、さらにバスで1時間強の道のりで、弘前駅に到着したときはすでに真っ暗の、9時半を回っていました。これが、もし 一人旅でしたら、とても退屈で辛い道中だったと思いますが、今回は幸いにも共同演者となって頂きました岐阜大学神経内科講師の林祐一先生と、行きの飛行機からずっとご一緒させて頂きまして、楽しいお話を色々とお聞かせ頂きながらの道中となり、意外と早く着いたというのが印象です。

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弘前駅に到着後は、さっそく林先生と「岐阜大学神経内科&各リハ懇話会 in 弘前」を開催致しました。まず、林先生には当院を神経病理学会にデビューさせて頂けましたお礼とともに(今回の発表は、岐阜大学神経内科様の強力なご支援あってのものでした)、津軽海峡の海の幸をつまみながら、今後の病病連携や共同臨床研究についてなど、大変有意義な懇話をさせて頂く事ができ、往路の疲れも吹っ飛ばすことが出来ました(笑)。

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さて私は、大会2日目からの参加となりましたが、写真の様に顕微鏡がズラリと並んでいてる会場には感激で、さすが「神経病理学を極める会!」と、テンションは最初から全快でした(^^)/。臨床系の学会で、顕微鏡と一緒できる事はとても珍しい事で、思わず記念写メを沢山取ってしまいました。林祐一先生は学会中、病理標本を顕微鏡で熱心に観察されていて、さすが我がニューロロジーの師匠だと思いました。

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2日目の午前は、林祐一先生のご発表がありました。これは発表直前に座長の先生とお話しされている様子ですが、林先生は「あー、あー、緊張してきた、どうしましょう?」とおっしゃらていました。林先生は、国内外を問わず数多くの学会で発表をされており、まさに「学会の百戦錬磨ドクター」ですが、そのような先生でも緊張される事があること、大変意外でした(^^;)。

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林先生のご発表は、PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)と最終診断された症例提示でした。PRESはその名の通り、主に後頭葉白質に可逆性の病変を来す疾患で、頻度は多くないものの画像診断の発達とともに遭遇する機会も増えてきいます。この症例はPRESでも最重症の病型で、頭部の画像所見、出血病変も合併した病理像、そして「可逆性(reversible)も時には不可逆性(irreversible)となる事もある」をお示しされた大変貴重な症例でした。画像のみでは診断が困難で、神経病理を行う事によって得られた重要な知見であり、神経病理学の意義を改めて学ばせて頂く事が出来ました。

2日目の夜には全体懇親会があり、全国の神経内科先生方にお目にかかれると事で、私も参加致しました。会は大会長、若林孝一先生(弘前大学大学院医学研究科脳神経病理学教授)、続いて学会理事長、高橋均先生(新潟大學脳研究所病理学分野教授)のオープニングスピーチで始まりました。お二人の先生は、本学会の歴史やと会の意義、またお互いの相思相愛♡(笑)ぶりなども、ユーモアたっぷりにお話になり、懇親会は一気に和やかな雰囲気となりました。マグロ解体ショーや津軽三味線演奏会もあり、まさに大会長の「お・も・て・な・し・精神」が満載の会でした。特に解体したての新鮮マグロのお刺身は、頬が落ちるほど美味しく、お酒がさらに進みました(^o^)。

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懇親会には全国の御高名な先生方が参加されていましたが、林先生は歩く度に各先生から声を掛けられていて、お顔が広い先生である事を改めて感じました。林先生は神経内科の研修を新潟大学および関連病院でされたそうですが、学会理事長・高橋先生はそのときのオーベン先生だったそうです。岐阜での林先生の御活躍ぶりに、大変ご満悦の様子が印象的でした。

 今回の発表でご指導賜りました愛知医科大学加齢医科学研究所教授の吉田眞理先生、准教授の岩崎靖先生にもお目にかかれました。林祐一先生にもお入り頂いての、このフォーショットをゲット出来ないと、岐阜には帰れないつもりでの本学会参加でしたので、心から安堵しました。3人の先生方には、診療から病理解剖を通じて神経内科学・神経病理学のご指導を頂いておりますこと、心より御礼申し上げました。

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最終日の3日目は連続の懇親会がたたったのか(特に前夜が応えました)、相当な二日酔い状態で目覚めました(>_<)。

午前には、シンポジウム「典型像と非典型像:隠れた本質を見抜く」に参加しました。その趣旨は「医師が臨床現場で役立つツールの発信」で、各分野のエキスパート先生方よりお話をお聞かせ頂ける、神経病理学の向学には絶好の機会です。

まず吉田先生より、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)と前頭側頭葉変性症」のお題での講演がありました。写真のように、加齢医科学研究所ブレインリソースセンターの2015年までの累積剖検数は5440例、ALSと病理診断された症例は277例にも及ぶそうです。この数の凄さは、一度でも剖検~神経病理に携われた方は、必ずご理解出来ると思います。この豊富な剖検症例数は、何より説得力のある数値なのです!

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近年、ALSと前頭側頭葉変性症の一部では、TDP-43という共通のタンパク質が神経細胞内に蓄積する事が明らかにされ、それを手がかりに病態と病因の解明が急速に進んでいます。私が学生の頃は、ALSと認知症は全く別物との理解でしたが、ALSの患者さまでも認知症を併発したり、また認知症と思われていた方が、途中経過でALS症状を合併することは、神経病理学的には説明可能との考えに変わってきています。連続剖検症例から得られた知見に基づき、まずは典型例を中心にその病理像のスペクトグラムを、レッスンして頂きました。

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吉田先生は、非典型的な臨床経過や病理像を呈する症例もお示し頂き、これも大変勉強になりました。ALSにおいて、その症状や経過は様々である事は以前より疑問でしたが、病理で病変の広がりを把握出来れば、説明可能である事を良く理解出来ました。こうした知識は、私達臨床医が臨床診断を行う上でも大変重要で、自身の診療にも活かしていきたいと思いました。

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岩崎先生の教育講演は「孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病:異端の道化師」のお題でした。クロイツフェルト・ヤコブ病のついての先進的なお話は、大学院在籍時よりお聞かせ頂いておりましたが、臨床所見と病理所見、また遺伝子変異・多型との対比のエビデンス構築に尽力されておられます。クロイツフェルト・ヤコブ病症例の剖検は全国の各地から依頼があり、現在では70%強が加齢医科学研究所で施行されているとの事、今やこの分野の第一人者的先生でいらっしゃいます。

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現在、クロイツフェルト・ヤコブ病の診断はm遺伝子解析やタンパク解析を追加する事により、それぞれの病型がクリアカットに分類できるようになっている事、お示し頂きました。

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また写真の様に、各ステージ毎の神経病理所見を分かりやすくお示し頂き、これまた大変勉強になりました。岩崎先生は前夜、夜遅くまでお酒にお付き合い頂いたのに、朝早くからのプレゼンでも別人のようにシャッキリとこなされるお姿はさすがだと思いました。「神経病理のスペシャリスト先生方はお酒がとても強い」を改めて理解出来ました。

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 お二人のエキスパート先生の講演より、2大神経疾患についての理解を深められたと共に、新しい医学の発見には、地道な症例の集積がいかに重要であるかを学ばせて頂きました。

 さて最後は、私の発表です。臨床診断は「認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症」、最終診断は病理所見より「前頭側頭型認知症」となった症例で、病変はほとんど上位のみで、下位は極めて乏しかった事が医学的に貴重との事で、その臨床経過と病理所見を報告させて頂きました。座長は近江八幡市立総合医療センター神経内科部長、松尾宏俊先生にご担当頂きましたが、写真のように熱心に私の発表をフォローして下さいまして、まるでやさしいお兄さんに見守られている感じでした(^_^)。

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今回の発表は、ご家族様のご協力の元、岐阜大学神経内科様、愛知医科大学加齢医科学研究様のご支援を頂き実現することが出来たものです。将来の神経難病の病態解明・治療法確立に貢献して頂きました患者様・ご家族様には、心から敬意を表するとともに、関係者皆様に心より御礼申し上げ、発表を終えました。 

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座長の松尾先生からは、下記のようなお言葉を賜りましたので、そのままアップさせて頂きます。

「先生方の剖検への取り組みは大変素晴らしく、2つの大学病院と貴院の、どの一つが欠けても、あのような発表はできない訳であり、関係された皆様方の努力が実を結んだ成果だと言えます。また、ご遺族に剖検を承諾していただけているということは、貴院が信頼される医療を提供、実践されている証左だと思います」

滋賀の第一線医療機関様で御活躍されている神経内科先生より、岐阜大学神経内科様、愛知医科大学加齢医科学研究様と当院の剖検の取り組みに対して、このようなご評価を頂けました事は大変嬉しかったです。松尾先生、誠にありがとうございました。

発表後には、多大のご支援とご指導を賜りました共著先生方と、ポスターの前で記念写真ご一緒させて頂きました。今回の「神経内科学・王道の会 」デビューを良き機会として、岐阜脳神経医療の発展に貢献できるよう、さらに頑張りたいと思いました。

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医療法人誠道会
各務原リハビリテーション病院
副院長・神経内科 和座 雅浩 

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