腰痛は“座りすぎ”だけじゃない!デスクワーク世代の整形診療活用術

「腰が重い」「張っている」「痛みが続く」——そんな不調を感じながらも、「若いから大丈夫」「忙しいから仕方ない」と放置していませんか?
近年、デスクワーク中心の働き方や在宅勤務の増加により、20代〜40代の腰痛相談が急増しています。
長時間の座り姿勢だけでなく、ストレスや運動不足、育児による負担など、腰痛の原因はさまざま。
そしてその多くが、“放置すれば慢性化する”タイプの腰痛です。
今月の整形診療ブログの締めくくりとして、今回は働き盛り世代の腰痛に焦点を当て、「放置しない」ための第一歩を一緒に考えてみましょう。 当院では、こうした若い世代の腰痛にも対応できるよう、整形診療の体制を拡充しています。
“時間がない”“まだ我慢できる”——そんな理由で受診を先延ばしにしていませんか?
まずはお気軽にご相談ください。
腰痛の原因と特徴——働き盛り世代に多い疾患とは?
腰痛は「座りすぎ」だけで起こるものではありません。
働き盛りの世代では、姿勢・筋力・ストレス・加齢変化などが複雑に絡み合い、さまざまな疾患につながることがあります。
以下は、当院でも多くご相談いただく代表的な疾患です。
主な疾患と特徴
1. 筋筋膜性腰痛症
筋肉や筋膜の緊張・炎症による腰痛。長時間の座位やストレスが誘因。
好発年齢:20〜50代/背景:デスクワーク・育児・運動不足
2. 腰椎椎間板症
椎間板の変性により腰部に鈍痛。前屈で痛みが増すことが多い。
好発年齢:30〜50代/背景:座り姿勢・重い物の持ち運び
3. 腰椎椎間板ヘルニア
椎間板が突出し、神経を圧迫。腰痛+下肢のしびれや痛みを伴う。
好発年齢:20〜40代/背景:急な動作・姿勢不良・遺伝的要因
4. 仙腸関節障害
骨盤の関節に炎症や不安定性。片側の腰痛や臀部痛が特徴。
好発年齢:30〜50代/背景:育児・介護・長時間の立位・座位
5. 腰椎変性すべり症
椎体が前方にずれ、神経を圧迫。腰痛+足のしびれ・歩行困難。
好発年齢:40代以降/背景:加齢・筋力低下・女性に多い傾向
6. 腰部脊柱管狭窄症
神経の通り道が狭くなり、腰痛+間欠性跛行(歩くと痛む)。
好発年齢:50代以降/背景:加齢・骨変形・慢性化しやすい
その他の要因
- ストレス・睡眠不足:自律神経の乱れが痛みの感受性を高め、筋緊張を引き起こす
- 運動不足・体幹筋力低下:腰椎を支える力が弱まり、慢性的な負担に
- 姿勢の偏り:猫背・骨盤後傾などが腰部の筋肉や椎間板にストレスを与える
- 育児・介護による負荷:中腰・抱っこ・長時間の同一姿勢が腰痛の誘因に
季節(冬)の要因
- 筋肉がこわばりやすくなる
寒さによって血流が低下し、筋肉が緊張しやすくなります。とくに腰まわりは冷えやすく、柔軟性が落ちることで痛みが出やすくなります。 - 動きが少なくなる
寒いと自然と動く量が減り、筋力や関節の可動域が低下しがちです。これが腰への負担につながります。 - 厚着による姿勢の崩れ
重ね着や厚手のコートで動きが制限され、知らず知らずのうちに不自然な姿勢をとってしまうことも。
放置するとどうなる?
- 痛みが慢性化し、日常生活や仕事に支障をきたす
- 神経症状(しびれ・感覚異常・筋力低下)を伴う場合は、早期の診断と治療が重要
- 「湿布で様子を見る」「市販薬でしのぐ」だけでは、根本的な改善につながらないことも
このように、腰痛は単なる「疲れ」ではなく、疾患としての背景を持つケースが多くあります。
働く世代のための腰痛予防&改善ケア
1. 姿勢を整えるだけで、腰の負担は激減
- 長時間座るときは、骨盤を立てて座る(背もたれに頼りすぎない)
- デスクの高さ・椅子の位置を調整し、肘・膝が90度になるように
- スマホやPCを見るときは、目線を下げすぎないように注意
2. 1時間に1回は「立つ・伸ばす・動かす」
- 立ち上がって背伸び、肩回し、軽い屈伸などで血流を促進
- トイレやコピー機まで歩くなど、小さな移動を意識的に取り入れる
- 「座りっぱなし」は腰痛の最大の敵
3. 腰を支える筋肉を育てる
- 腹筋・背筋・お尻の筋肉をゆるやかに鍛えることで、腰の負担を軽減
- 例:ドローイン(お腹をへこませて呼吸)/ヒップリフト/壁スクワット
- 無理なく、週2〜3回からスタート
4. 睡眠環境を見直す
- 柔らかすぎるマットレスは腰が沈みすぎて痛みの原因に
- 横向きで膝を軽く曲げる姿勢が腰に優しい
- 枕の高さも首〜腰のラインに影響するため要チェック
5. ストレスと腰痛はつながっている
- 緊張や不安で筋肉がこわばり、血流が悪化して痛みが出やすくなる
- 深呼吸・軽い運動・趣味の時間などで、心身のリセットを意識
- 「痛み=身体だけの問題ではない」と知ることが第一歩
6.寒い季節の腰痛予防ポイント
- 腰まわりを冷やさないよう、腹巻きやカイロで保温
- 朝の動き出しはゆっくり、軽いストレッチで筋肉をほぐす
- 室内でもこまめに動いて、血流を促す習慣を意識する

予防のポイント
生活習慣 | 工夫の例 |
姿勢 | 椅子に深く座り、背もたれを使う。PC画面は目線の高さに調整 |
休憩 | 1時間に1回は立ち上がって軽くストレッチ。肩回しや腰ひねりがおすすめ |
運動 | 通勤時に階段を使う、昼休みに5分だけ歩くなど、無理なく体を動かす習慣を |
睡眠環境 | 寝具が柔らかすぎると腰が沈みすぎることも。寝返りしやすいマットレスを選ぶ |
改善のヒント——痛みがあるときの対処法
- 動ける範囲で軽く動く
完全に安静にすると筋力が落ちてしまうため、無理のない範囲で体を動かすことが回復につながります。
もちろんです。デスクワークによる腰痛に関連する公的機関の情報として、以下の厚生労働省の資料が非常に有用です。
厚生労働省「職場での腰痛を予防しましょう!」
このパンフレットでは、腰痛予防のための労働衛生管理体制や作業環境の整備、健康管理、教育のポイントなどが網羅されています。特に「同一姿勢での長時間作業」や「作業台・椅子の高さ調整」など、デスクワークに直結する内容が豊富です。
おすすめのストレッチ例(痛みが強くない場合)
ストレッチ名 | 方法 | ポイント |
腰ひねり | 椅子に座ったまま、ゆっくり左右に上半身をひねる | 呼吸を止めず、痛みが出ない範囲で行う |
膝抱え | 仰向けになり、片膝ずつ胸に引き寄せる | 腰が伸びる感覚を意識して、ゆっくり行う |
キャット&カウ | 四つん這いで背らせたりする | 呼吸に合わせて、ゆっくりと動かす |
太もも裏のストレッチ | 椅子に座り、片足を前に伸ばしてつま先を引く | 腰に負担をかけずに下肢をほぐす |
※痛みが強い場合は無理せず、整形外科で相談を。
- 温める・冷やすの使い分け
急性の痛みには冷却、慢性的なこわばりには温熱が効果的です。 - 整形診療で相談する
「仕事が忙しくて受診できない」と悩む方こそ、予約不要で相談できる整形診療を活用してください。
整形でできること——痛みの根本に向き合う診療
腰痛が長引く場合や、日常生活に支障をきたすような痛みがある場合は、整形での診療が有効です。
当院では、画像検査や触診を通じて痛みの原因を丁寧に見極め、患者さん一人ひとりに合わせた治療方針をご提案しています。
整形でできる主な対応内容:
- 骨・関節・筋肉の状態を確認する画像検査(レントゲンなど)
- 姿勢や動作のクセを見ながら、痛みの原因を評価
- 痛みの程度や生活背景に応じた薬の処方
- リハビリや運動療法のご案内(必要に応じて)
痛みの原因が「筋肉由来」なのか「神経由来」なのか、「一時的なもの」なのか「慢性的なもの」なのかを見極めることで、無理のない改善策を一緒に考えることができます 「年齢のせいだから仕方ない」と思われがちな腰痛も、整形での診療によって改善の糸口が見つかることがあります。
腰痛が長引く場合や、日常生活に支障が出ている場合など、気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
まとめ——腰痛予防は、今日からできる小さな習慣から
腰痛は、誰にでも起こりうる身近な不調です。
ですが、日々の姿勢や動作、ちょっとした習慣の見直しによって、痛みの予防や軽減につながることも少なくありません。
今回ご紹介したポイントは、どれも特別な道具や時間を必要としないものばかり。
まずは「できそうなこと」から、無理なく取り入れてみることが大切です。
一歩踏み出すために——こんな方はご相談ください
- 最近、腰の違和感が続いている
- 朝起きたときや長時間座った後に痛みがある
- 「年齢のせいかな」と思っているが、少し不安
- 仕事や家事で腰に負担がかかっている気がする
各務原市にある各務原リハビリテーション病院では、患者さんの声に耳を傾けながら、日常生活に寄り添ったケアを大切にしています。また、令和7年8月より、整形の外来診療を拡大し、予約なしで整形外科専門医による診療を受けていただけるようになりました。
「これくらいで受診してもいいのかな…」と思われる方も、どうぞお気軽にご相談ください。
監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当
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