【すぐ実践】高齢者の誤嚥性肺炎を防ぐ!家庭でできる予防策と初期サイン

最近、食事中に「むせる」ことが増えた――そんな高齢のご家族を見て、少し気になったことはありませんか?
「年のせいかな」「水の飲み方が悪かったのかも」と見過ごされがちですが、実はその“むせ”が、命に関わる病気のサインである可能性があります。

高齢者に多く見られる「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」は、食べ物や唾液が誤って気管に入り、肺に炎症を起こす病気です。初期には目立った症状がないこともあり、気づかないまま進行するケースも少なくありません。

この記事では、「むせる」と「誤嚥」の違いをわかりやすく解説しながら、誤嚥性肺炎の予防に役立つ家庭での工夫や、医療機関でのサポートについてご紹介します。
ご家族の健康を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

誤嚥性肺炎とは?高齢者に多い理由

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とは、本来食道に入るはずの食べ物や唾液、胃液などが誤って気管に入り、肺に炎症を起こす病気です。特に高齢者に多く見られ、命に関わる重篤な肺炎につながることもあります。

高齢になると、飲み込む力(嚥下機能)や咳をして異物を排出する力(咳反射)が弱くなり、誤嚥が起こりやすくなります。また、口腔内の細菌が気管に入り込むことで、肺炎を引き起こすリスクも高まります。

「むせ=咳き込むこと」と思われがちですが、実はむせないまま誤嚥が起こることもあります。これが「不顕性誤嚥」と呼ばれる状態で、咳反射が弱くなった高齢者に多く見られます。異物が静かに気管へ入り、肺炎につながってしまうため、周囲の気づきが重要です。

誤嚥性肺炎は、早期に気づいて予防することで防げる病気です。次の章では、「むせる」と「誤嚥」の違いをわかりやすく解説しながら、家庭でできる予防策をご紹介します。

誤嚥性肺炎の基本ポイントまとめ

項目内容
病名誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)
原因食べ物・唾液・胃液などが誤って気管に入り、肺に炎症が起こる
高齢者に多い理由嚥下機能や咳反射の低下、口腔内の細菌増加
注意すべき症状食事中のむせ、声のかすれ、微熱、元気がない
むせない誤嚥(不顕性誤嚥)咳反射が弱いと、異物が気管に入ってもむせずに肺炎へ進行することがある

「むせる」と「誤嚥」の違い

「むせる」と「誤嚥(ごえん)」は似ているようで、実は異なる現象です。
どちらも食べ物や飲み物が気道に入りかけたときに起こりますが、意味と危険性には違いがあります。

むせるとは、気道に異物が入りかけたときに、体がそれを排出しようとして咳き込む反応のことです。健康な人でも水を飲んだときにむせることはありますが、咳によって異物を外に出せれば大きな問題にはなりません。

一方で、誤嚥は、異物が気管に入り、うまく排出できずに肺へと到達してしまう状態を指します。これが繰り返されると、肺に炎症が起きて「誤嚥性肺炎」につながることがあります。

さらに注意が必要なのが、先ほどのセクションで記載した「むせない誤嚥」です。高齢になると咳反射が弱くなり、異物が気管に入ってもむせずにそのまま肺に入ってしまうことがあります。本人も周囲も気づかないまま肺炎が進行するため、特に注意が必要です。

「むせる」と「誤嚥」の違い

項目むせる誤嚥むせない誤嚥
定義咳で異物を排出しようとする反応異物が気管に入り肺に達する状態咳反射が起こらず、異物が静かに肺へ入る状態
気づきやすさ本人も周囲も気づきやすい咳や苦しさで気づくことが多い自覚症状が乏しく、気づきにくい
高齢者での注意点咳が出にくくなると誤嚥につながる誤嚥後に肺炎を起こすリスクがある咳反射の低下で、知らないうちに肺炎が進行することがある

家庭でできる誤嚥性肺炎の予防策

1. 食事姿勢の見直し

背筋を伸ばし、顎を軽く引いた姿勢で食べることで、食べ物が正しく食道に入りやすくなります。
食後すぐに横になると、唾液や食べ物が気管に入りやすくなるため、30分ほどは座って過ごすようにしましょう。

2. 口腔ケアの習慣化

歯磨きだけでなく、舌の清掃やうがいも大切です。入れ歯を使用している場合は、毎日の洗浄を忘れずに。
口腔ケアは、肺炎予防だけでなく、全身の健康にもつながります。

3. 嚥下体操で飲み込む力を鍛える

「あいうえお」と大きく口を動かす体操や、首回し、深呼吸などが効果的です。
嚥下機能の低下が気になる方は、かかりつけ医や専門の医療機関にご相談いただくことをおすすめします。

家族が気づける「見守りポイント」チェックリスト

以下のような様子が見られたら、誤嚥のサインかもしれません。日々の食事や会話の中で、さりげなく観察してみましょう。

  • □ 食事中によくむせるようになった
  • □ 飲み込んだ後に咳き込むことが増えた
  • □ 声がかすれる、湿った感じになることがある
  • □ 食後に微熱が続く、なんとなく元気がない
  • □ 食事の量が減った、食べるのを嫌がるようになった
  • □ 口の中が乾燥している、唾液の量が少ない
  • □ 食事中にぼんやりしている、集中していない様子がある

👉 ひとつでも当てはまる場合は、医療機関への相談をおすすめします。

まとめ

高齢者の「むせ」は、ただの老化現象ではなく、誤嚥性肺炎の初期サインである可能性があります。
特に、食事中にむせる頻度が増えたり、食後に咳き込むようになった場合は、誤嚥による肺炎のリスクを考える必要があります。

誤嚥性肺炎は、初期症状が目立ちにくく、気づかないうちに進行することもあるため、日常のちょっとした変化を見逃さないことが大切です。
家庭でできる予防策「食事姿勢の見直し」「口腔ケア」「嚥下体操」などを取り入れることで、誤嚥のリスクを減らすことができます。

また、ご家族が「最近むせることが多い」「食事の様子が気になる」と感じたときは、医療機関への相談が安心につながります。
各務原リハビリテーション病院では、内科と小児科の診療を、初めての方でもご予約なしで受けていただけます。
誤嚥や食事に関するお悩みも、お気軽にご相談ください。

ご本人の健康はもちろん、ご家族の安心のためにも、早めの気づきと対応が何よりの予防です。
この機会に、身近な「むせ」に目を向けてみませんか?

🔗参考リンク

誤嚥性肺炎について、さらに詳しく知りたい方へ。信頼できる公的機関・専門団体の情報をご紹介します。

監修:各務原リハビリテーション病院 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当