ワクチン接種済みでも油断禁物?はしかの感染リスクに注目

はしか(麻疹)は、子どもの病気と思われがちですが、大人も感染する可能性があります。
特にワクチン接種済みであっても、時間が経つにつれ免疫が低下し、感染リスクが高まることがある ため、注意が必要です。
また、はしかは感染力が非常に強く、空気感染や飛沫感染によって同じ空間にいるだけで広がるリスクがあります。
子どもと大人でリスクの違いがあるため、自身の免疫状況を確認し、感染の危険性を正しく理解することが重要 です。
本記事では、はしかの感染リスクに焦点を当て、年齢による違いや気をつけるポイントを詳しく解説します。
はしか(麻疹)の感染リスク
はしか(麻疹)の感染経路
麻疹ウイルスは 非常に感染力が強く、以下の3つの経路で感染します:
- 空気感染
- 感染者が咳やくしゃみをすると、ウイルスが空気中に拡散し、同じ空間にいるだけで感染する。
- インフルエンザよりも感染力が強く、免疫を持たない人が感染するとほぼ100%発症する。
- 飛沫感染
- 感染者の咳やくしゃみの飛沫を直接吸い込むことで感染。
- 近距離での会話や接触 で感染する可能性が高い。
- 接触感染
- 感染者が触れた ドアノブや手すり などにウイルスが付着し、それを触った人が 口や鼻を触ることで感染。
- 手洗いの徹底 が重要な予防策となる。
このように、麻疹は 空気感染するため、マスクだけでは完全に防ぐことができません。
そのため、ワクチン接種が最も有効な予防策 となります。
子どもと大人の感染リスクの違い
項目 | 子ども | 大人 |
---|---|---|
感染しやすさ | 保育園・学校などの集団生活で感染拡大しやすい | 職場・公共交通機関など人との接触が多い場面で感染する可能性 |
免疫の違い | 幼児期のワクチン接種により免疫を持つことが多い | ワクチン接種から時間が経ち、免疫が低下している可能性がある |
感染経路 | 飛沫感染・空気感染・接触感染 による拡散が多い | 同様に飛沫・空気・接触感染のリスクがあるが、発症時の影響が大きい |
合併症の可能性 | 中耳炎、肺炎 など比較的軽度の合併症が多い | 肺炎、脳炎、呼吸困難など深刻な合併症のリスクが高い |
症状の重さ | 熱は出るが比較的軽症で済むことが多い | 高熱が長引き、強い倦怠感が続くことが多く、重症化の可能性が高い |
受診の重要性 | 高熱・咳が続く場合は早めの受診が推奨される | 合併症のリスクを考慮し、症状が出たら慎重に受診を検討する必要がある |
はしかは本来 乳幼児の感染が多い病気 ですが、最近では大人の感染も増加しています。
なぜワクチン接種済みでも感染するのか?
「子どもの頃にワクチンを接種しているのに、なぜ大人になってから感染するのか?」という疑問を持つ方は多いでしょう。
その理由には、免疫の減衰 や 世代ごとのワクチン接種状況の違い などが関係しています。
- 免疫の減衰
- 麻疹ワクチンは 95%以上の人に免疫を獲得させる 効果がありますが、時間の経過とともに 免疫が弱まる ことがあります。
- 特に 1回しか接種していない世代 は、免疫が十分に維持されていない可能性があり、感染リスクが高まります。
- ワクチン接種の歴史的な違い
- 2006年から 2回接種制度 が導入されましたが、それ以前の世代は 1回接種のみ だったため、免疫が不十分な人がいる可能性があります。
- 1977年以前に生まれた人は 任意接種だったため、ワクチンを受けていない可能性 もあります。
- 海外からの感染流入
- 日本では麻疹の 排除状態 が認定されていますが、海外ではまだ流行している地域があり、渡航者を通じて ウイルスが持ち込まれる ことがあります。
- 免疫が弱まっている大人が感染すると、 重症化しやすい ため注意が必要です。
なぜ大人は、はしかで重症化しやすいのか?
- 免疫の低下
- 子どもの頃にワクチンを接種していても、時間の経過とともに免疫が弱まる ことがあります。
- 特に 1回しか接種していない世代 は、免疫が十分に維持されていない可能性があり、感染すると重症化しやすい。
- 合併症のリスクが高い
- 大人が麻疹にかかると、肺炎や脳炎、中耳炎などの合併症を引き起こす可能性 が高くなります。
- 特に 免疫力が低下している人(糖尿病患者、がん治療中の人、妊婦など)は重症化しやすい。
- 回復までの時間が長い
- 子どもは比較的早く回復することが多いですが、大人は 高熱が長引き、体力の消耗が激しくなる ため、回復に時間がかかることがあります。
- 入院が必要になるケースもあり、仕事や日常生活への影響が大きい。
- 免疫の過剰反応
- 大人は 免疫システムが成熟しているため、過剰な炎症反応を起こしやすい。
- これにより、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクが高まる。
はしか(麻疹)にかかった場合の対応と医療機関の受診タイミング
はしか(麻疹)は、感染力が非常に強く、一度感染すると特効薬はなく、対症療法が中心となります。そのため、症状が出た際の適切な対応 が重要になります。
はしかに感染したらどうする?
はしかの症状が現れた場合、以下の対応が推奨されます。
- 自宅で安静にする
はしかは 高熱や全身の発疹を伴うため、体力の消耗が激しい です。症状が落ち着くまでは、十分な休息をとりましょう。
※感染拡大を防ぐため、登園・登校・出勤は控えます。 - 水分補給をこまめに行う
高熱が続くことで脱水症状になりやすいため、十分な水分補給が必要 です。特に幼児や高齢者は注意しましょう。 - 解熱剤を使用する場合は医師に相談
市販の解熱剤の中には、はしかの症状を悪化させる可能性があるものもあります。自己判断せず、医師の指示に従う ことが重要です。
医療機関への受診タイミング
次のような症状が現れた場合、速やかに医療機関を受診しましょう。
- 高熱が続く場合
はしかは発熱期間が長いため、高熱が続く場合は医療機関へ相談することが重要 です。特に 38℃以上の熱が長引く場合 や ぐったりしている場合 は注意が必要です。 - 呼吸が苦しい、せきがひどい場合
肺炎などの合併症が疑われるため、特に 息苦しさやチアノーゼ(唇の色が変わる) がある場合は急いで受診を。 - 意識がもうろうとしている、けいれんを伴う場合
麻疹脳炎などの 神経系合併症 の可能性があります。すぐに医療機関へ相談してください。
家族や周囲への感染対策
はしかは 空気感染 するため、同居家族や職場でも感染拡大のリスクがあります。
発症した場合は、以下の対策を徹底しましょう。
- 家族はマスク着用&こまめな換気を
- 感染者は別室で休養し、接触を減らす
- タオルや食器の共有を避ける
最後に、はしか(麻疹)予防の大切さを忘れずに
はしか(麻疹)は、「子どもの病気」と思われがちですが、大人にも感染・重症化のリスクがある 病気です。
特に、ワクチン接種を受けた世代でも、免疫の減衰や接種回数の違いによって感染リスクが高まる可能性 があります。
だからこそ、自分の免疫状況を確認し、追加接種の必要性を考えることが重要 です。
また、感染拡大を防ぐために、日頃から ワクチン接種、手洗い、換気、適切な受診判断 を意識していきましょう。
「自分は大丈夫」と思わずに、家族や周囲の健康を守るためにも、今できる予防策をしっかり取ること が大切ですね。
当院では、小児科と内科の診療を行っております。
はしか(麻疹)の症状が気になる方や、ワクチン接種について相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。
皆様の健康を守るため、適切な予防と早めの対応を心がけましょう。
参考情報(公的機関の麻疹関連ページ)
📌 厚生労働省の麻しん(はしか)情報
📌 国立健康危機管理研究機構の感染症情報
監修 各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆 医療法人社団 誠道会 広報担当