子どもの発熱、熱中症と感染症の見分け方と対策

じめじめと蒸し暑いこの時期、「子どもが発熱した」と慌ててしまう保護者の方も多いのではないでしょうか。
熱中症かもしれないし、どこかで感染症をもらってきたのかもしれない——。
症状が似ているからこそ、正しく見極めるのは簡単ではありません。

とくに乳幼児は、自分の症状をうまく言葉にできないため、大人の“気づき”がとても重要になります。
この記事では、熱中症と感染症の違いや見極めのヒント、家庭でできる対策をわかりやすくご紹介します。

熱中症と感染症、なぜ見分けにくい?

「子どもが熱っぽい」「なんだか元気がない」
そんな様子に気づいたとき、「熱中症かな?それとも風邪?」と迷った経験はありませんか。

実は、熱中症と感染症の初期症状はとてもよく似ていて、見極めが難しいケースも少なくありません。
たとえば、どちらにも共通する症状として、次のようなものが見られます:

  • 微熱〜高熱
  • だるさ・食欲の低下
  • 吐き気や頭痛
  • 表情がぼんやりして反応が鈍い

特に小さなお子さんは、自分の体調をうまく言葉にできないため、まわりの大人が変化に気づいてあげることが大切です。

気温と湿度が高くなるこの季節は、身体の熱がこもりやすく、ウイルスも広がりやすい環境がそろいます。
つまり、熱中症にも感染症にも注意が必要な時期なのです。

次の章では、そうした“まぎらわしい症状”をどう見極めたらよいのか、環境や症状の経過に着目したヒントをご紹介します。

見極めポイントは“環境”と“経過”

熱中症と感染症の症状は似ていても、「どんな場所で、どんなふうに症状が出たか」という視点で見ていくと、手がかりが見つかることがあります。

たとえば次のような「環境の違い」がヒントになります。

  • 蒸し暑い部屋や屋外で、汗をかかずにぐったりしている → 熱中症の可能性
  • クーラーの効いた部屋でも、きょうだいや園の友だちも似た症状 → 感染症の可能性

また、症状の“あらわれ方”や“進み方”も大切な手がかりです。

  • 短時間で急に顔が赤くなり、呼びかけに反応しづらい → 熱中症を疑う
  • 少しずつ熱が上がり、咳や鼻水が出てきた → 感染症の可能性が高い

これらを100%見分けるのは難しくても、「いつ・どこで・どうだったか」をメモに残しておくと、受診時の手がかりにもなります。

※こどもの発熱は、思わぬ重症化や脱水につながることがあります。
 特に乳幼児や判断に迷う場合は、早めに医療機関に相談・受診されることをおすすめします。

感染症対策のマスク、熱中症リスクにも?

最近では、子どもがマスクを着ける機会は少なくなってきました。
実際、暑さや息苦しさを嫌がって、園や家庭でも「ほとんど着けていない」という声もよく聞かれます。

それでも、感染症が流行している時期や、集団生活の場面では、マスクが必要とされることがあります。
たとえば——

  • 保育園や幼稚園で感染症が広がっているとき
  • 通院や公共交通機関を利用する場面
  • 家族に高齢者や基礎疾患のある人がいる場合

こうした場面では、子ども自身を守るだけでなく、まわりの人への感染拡大を防ぐという意味でも、マスクが推奨されることがあります。

ところが、マスクには熱がこもりやすく、喉の渇きにも気づきにくくなるという側面もあります。
特に小さなお子さんは、自分から「暑い」「苦しい」と訴えることが難しく、大人が“マスクの外しどき”を判断する力が求められます。

厚生労働省や環境省も、「高温・多湿な環境下では、マスク着用は熱中症のリスクを高める」と注意喚起しています。

マスク以外にできる熱中症対策は?

感染症対策を意識しながらも、熱中症を防ぐためには、マスク以外の工夫も取り入れていくことが大切です。

  • 距離が取れる場面ではマスクを外す(屋外・散歩・公園など)
  • こまめな水分補給(マスクを外して飲みやすい環境づくり)
  • 通気性のよい服装や帽子で体温調整を助ける
  • 冷感グッズを活用する(※乳幼児は注意点あり)

マスクを外してもよいとされる場面(厚労省・環境省より)

  • 屋外で人との距離(2m以上)が保てるとき
  • 会話をしない屋内(図書館・静かな待合室など)
  • 呼吸が苦しそうなとき、顔が赤くなっているとき
  • 運動中や登園・通学時の徒歩移動中

補足:乳幼児に冷感グッズを使うときの注意点

冷感グッズは熱中症対策に役立ちますが、乳幼児に使う場合は特に注意が必要です。

  • 「赤ちゃん専用」と明記された製品を選ぶ(例:28℃で自然凍結する素材)
  • 使用は15〜30分程度、必ず保護者が見守る
  • 冷たすぎる素材や大人用の流用は避ける
  • 基本は通気性のよい服装・日陰・水分補給を優先

※冷感グッズはあくまで補助的な対策です。体調が不安定なときや判断に迷う場合は、医師に相談しましょう。

「感染症を防ぎたい」「でも熱中症も心配」
その間で揺れる毎日の中で、“マスクを外してもよい場面”を知っておくことは、子どもの健康を守るうえでも大切な知識です。

【参考リンク】
厚労省|マスク着用の考え方と今後のあり方
環境省|熱中症予防情報サイト
小児科オンライン|マスクと熱中症リスクの注意点

熱中症にも感染症にも気を配らなければならない季節。
小さなお子さんの健康を守るには、どちらか一方ではなく、“両方をゆるやかにカバーできる生活習慣”を整えることが大切です。

まずは、熱中症対策と感染症対策の“共通点”と“異なる点”を整理してみましょう。

熱中症と感染症、家庭でできる対策の比較表

対策項目熱中症対策感染症対策
水分補給こまめに、汗の前から意識して発熱や下痢のときは多めに
着替え汗をかいたらすぐに汚れた服や鼻水で湿った服を交換
室温管理28℃前後を目安にエアコン活用加湿器で乾燥対策+こまめな換気
手洗い・衛生習慣外出後や食前にしっかり同上+マスクや咳エチケットも意識

このように見てみると、日々のちょっとした工夫が、どちらの対策にもつながっていることがわかります。
たとえば——

  • 水分補給は、熱中症の予防だけでなく、感染症による脱水対策にも有効です。
  • 着替えは、汗や鼻水などで湿った衣類をそのままにしないことで、体温調節と衛生の両面に役立ちます。
  • 室温や湿度の管理は、熱中症の予防と同時に、ウイルスの繁殖を抑える環境づくりにもつながります。
  • 手洗いや換気は、感染症対策の基本でありながら、熱がこもりにくい空気の流れをつくる意味でも大切です。

「熱中症」「感染症」と名前は違っても、日々の小さなケアでどちらにもアプローチできることはたくさんあります。
お子さんの体調を“守る”というより、“整える”ようなやさしいケアを続けていけると安心ですね。

まとめ:迷ったら、ためらわず相談を

熱中症と感染症、似ている症状に戸惑う季節。
「どっちか分からない…」と不安になったときほど、気になる様子があれば、迷わず医療機関に相談することが大切です。

お子さんの小さな変化に気づいてあげられるのは、いちばん近くにいる大人だからこそ。
今回ご紹介したような、環境や症状の経過からのヒント・日常の工夫も、保護者の“気づきの目”を支える一助になれば幸いです。

「こんなことで相談してもいいのかな?」
そんなときこそ、ためらわずかかりつけの医療機関へ。
医師や看護師は、みなさんの「判断を助けるパートナー」でもあります。

なお、各務原リハビリテーション病院では、予約なしでも小児科・内科の診療を行っております。
気になる症状があるときは、どうぞお気軽にご相談ください。

必要以上に不安になる必要はありませんが、
必要なときに手を借りられる安心感が、何よりの備えかもしれませんね。

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監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当