梅雨に増える子どもの感染症、気づくサイン

「この前の熱と、今回のはちょっと違う気がする…」
梅雨どきは、気温や湿度の変化に加えて、子どもの体調もゆらぎやすい時期。特にこの季節に流行するいくつかの感染症は、発熱や発疹などの症状が似ているため、保護者として「これは大丈夫?それとも受診したほうがいい?」と戸惑う場面が増えてきます。
今回の記事では、「診断する」ことを目的とせず、保護者が日常の中で“気づいてあげられるサイン”に注目。
プール熱・手足口病・ヘルパンギーナといった感染症の“かもしれない”兆しと、受診の目安、家庭での見守り方について、やさしく整理してご紹介します。
“気づくサイン”とは?
子どもは体調の変化をうまく言葉にできないことも多く、発熱や咳といった“目に見える症状”が出る前に、ちょっとしたしぐさや行動の変化がヒントになることがあります。
たとえば、こんなサインに気づいたことはありませんか?
よく見られる“気づくサイン”の例
サイン | こんな様子が見られたら… | 考えられる感染症の一例 |
---|---|---|
食べたがらない・飲み物を嫌がる | 口の中を気にしている、よだれが増える | 手足口病、ヘルパンギーナ |
目をこする・まぶしがる | 目やにが増える、充血している | プール熱(咽頭結膜熱) |
手足をかゆがる・触る | 手のひらや足の裏に小さな発疹 | 手足口病 |
急にぐったり・眠りがち | 高熱が出る前兆のことも | ヘルパンギーナ、プール熱 |
声がかすれる・喉を痛がる | 飲み込むのを嫌がる、咳が増える | ヘルパンギーナ、RSウイルスなど |
梅雨に増える感染症と“気づくサイン”
梅雨の時期に流行しやすい感染症には、いくつかの共通点があります。どれもウイルス性で、特効薬はなく、症状を見守りながら回復を待つことが基本です。
ここでは、代表的な3つの感染症について、保護者が気づきやすい“サイン”を中心にご紹介します。

プール熱(咽頭結膜熱)
- 気づくサイン:
目が赤い/目やにが多い/「まぶしい」と言う/喉が痛そう - 特徴:
39℃前後の高熱、喉の痛み、目の充血が3大症状。アデノウイルスによる感染で、プールやタオルの共用などから広がります。 - 見守りポイント:
目の症状があるときは、タオルの共用を避け、目をこすらないよう声かけを。解熱後も2日間は登園を控える必要があります。
手足口病
- 気づくサイン:
手足をかゆがる/口の中を気にする/食べたがらない - 特徴:
手のひら・足の裏・口の中に小さな発疹が出ることが多く、発熱は軽度またはなし。エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが原因です。 - 見守りポイント:
発疹があっても元気で食事がとれていれば、登園可能な場合も。口内の痛みで水分がとれないときは、ゼリーやスプーン1杯ずつの補給を。
ヘルパンギーナ
- 気づくサイン:
急な高熱/飲み物を嫌がる/喉の奥を痛がる - 特徴:
39℃以上の高熱と、喉の奥にできる水ぶくれが特徴。夏風邪の一種で、5歳以下に多く見られます。 - 見守りポイント:
食事や水分を嫌がるときは、無理をさせず冷たい飲み物やゼリーなどで対応を。解熱後、食事がとれるようになれば登園可能です。
その他の呼吸器系ウイルスにも注意
感染症名 | 主な症状 | 気づくサイン | 注意点 |
---|---|---|---|
RSウイルス | 咳・鼻水・高熱・喘鳴(ゼーゼー音) | 呼吸が速い/苦しそう/ぐったり | 特に乳児は重症化しやすく、早めの受診を |
ヒトメタニューモウイルス | 咳・鼻水・発熱(長引くことも) | 咳が続く/食欲がない/ゼーゼー音 | RSと似た症状。2歳未満は注意が必要 |
💡「風邪かな?」と思っても、**呼吸の様子や元気の有無が“気づくサイン”**になることがあります。迷ったときは、かかりつけ医や#8000(こども医療電話相談)などに相談を。
参考リンク(感染症の基礎情報・流行状況)
- 厚生労働省|感染症情報ページ
感染症の基礎知識や予防策、感染経路などをわかりやすく紹介。 - 国立感染症研究所|感染症発生動向調査(IDWR)
プール熱や手足口病など、週ごとの流行状況を確認できます。
サイン | こんなときは受診を |
---|---|
高熱が続く | 38.5℃以上の熱が1日以上続く/解熱してもすぐに再発する |
水分がとれない | 飲み物を嫌がる/おしっこが半日以上出ていない |
呼吸が苦しそう | ゼーゼー・ヒューヒューといった音/胸がペコペコへこむ |
ぐったりしている | 目が合わない/反応が鈍い/いつもと様子が違う |
発疹が急に広がる | 痛がる・かゆがる/発疹の色や形が変化している |
💡 迷ったときは、#8000(こども医療電話相談)などの相談窓口を活用するのも安心につながります。
参考リンク(相談窓口)
- 厚生労働省|子ども医療電話相談事業(#8000)
全国共通の短縮番号「#8000」で、休日や夜間に小児科の看護師等へ電話相談ができます。 - 岐阜県こども医療電話相談(#8000がつながらない場合)
☎ 058-240-4199 に電話をかける
※IP電話やダイヤル回線などで「#8000」が使えない場合はこちらへ。
家庭でできる見守りの工夫
- 水分補給は「少しずつ・こまめに」
→ スプーン1杯ずつでもOK。ゼリーや冷たい飲み物も◎ - 食事は無理をさせず、食べられるものを
→ おかゆ・スープ・ヨーグルトなど、のどごしのよいものを中心に - 発疹や目の症状があるときは
→ かきむしらないよう爪を短く/タオルや食器の共用は避ける - 眠りが浅い・不安定なときは
→ 静かな環境で、好きな音楽や絵本などで安心感を
「全部を見分ける必要はありません。気づいたことを、誰かに相談できることが大切です。」
そんなメッセージを込めて、保護者の方が少しでも安心して見守れるよう、この記事がそっと寄り添えたらうれしいです。
保護者へのメッセージ
子どもの感染症は、症状の現れ方や進行のスピードが早く、保護者の方にとっては「見極めが難しい」と感じる場面も少なくありません。特に梅雨の時期は、複数のウイルス性疾患が同時に流行しやすく、発熱・発疹・咳などの症状が重なって見えることもあります。
しかし、すべてを正確に見分ける必要はありません。
「いつもと違う」「ちょっと気になる」——その“気づき”こそが、早めの対応につながる大切なサインです。
感染症の多くは自然に回復するものですが、重症化のリスクがあるケースや、早期の医療的判断が必要な場合もあります。迷ったときは、ひとりで抱え込まず、医療機関や相談窓口を活用してください。
各務原リハビリテーション病院では、予約なしで小児科・内科の診療を行っております。
「受診すべきか迷う…」そんな時こそ、お気軽にご相談ください。
お子さまが健康に梅雨を乗り越えられるよう、一緒にサポートしていきましょう。
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監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当