子どもの隠れ脱水とは?症状チェックと家庭でできる対策まとめ

「汗をかいていないし、元気そうだから大丈夫」
——そう思っていたお子さんが、なんとなく元気がない、食欲がない。
それは、**“隠れ脱水”**のサインかもしれません。
子どもは自分から「喉が渇いた」と伝えられなかったり、遊びに夢中になって水分補給を後回しにしてしまうことが少なくありません。
特に夏場は、目に見える症状がなくても、体の中では水分や塩分が少しずつ失われていきます。
こうした見た目では気づきにくい水分不足の状態を、医療の現場では「隠れ脱水」と呼びます。進行すると本格的な脱水症状や熱中症につながるおそれもあるため、早めの気づきと予防・対策がとても大切です。
このブログでは、子どもの隠れ脱水に気づくポイントと、家庭で今すぐできる予防と対処法をご紹介します。
お子さんの元気な夏を守るために、ぜひ参考になさってください。

そもそも「隠れ脱水」とは?

「隠れ脱水」とは、目立った症状がないにもかかわらず、体の中では水分や電解質(ナトリウムなど)が不足し始めている状態を指します。
医学的には脱水症の初期段階ともされており、自覚のないまま進行することがあるため注意が必要です。

脱水症との違いは?

比較項目隠れ脱水脱水症
症状のわかりやすさほとんどない/分かりづらい頭痛・倦怠感・吐き気など明確な症状
本人の自覚なし、またはあいまい自覚しやすい
周囲の気づき難しい(見た目は元気に見えることも)比較的気づきやすい
対応の優先度早めの予防と観察が重要状況によって医療対応が必要

子どもが「隠れ脱水」になりやすい理由

  • 体の水分量が多く、失いやすい(体重の約70%が水分)
  • 体温調節機能が未熟で、暑さに対応しにくい
  • 喉の渇きを訴えにくい/我慢しがち
  • 遊びや活動を優先し、水分補給を後回しにする傾向

見た目に変化がなくても、体の中では水分と塩分のバランスが崩れはじめていることがあるため、「喉が渇いていない=大丈夫」ではないのです。

このように、「隠れ脱水」はご家庭では見逃されやすい状態です。
次の章では、家庭で気づけるサイン具体的なチェックポイントをわかりやすくご紹介します。

家庭で気づける!隠れ脱水のサインとは?

隠れ脱水は、明らかな症状が出ないまま進行するため、気づきにくいのが特徴です。
特に子どもは「なんとなく元気がない」程度のサインしか出さないことも多く、保護者が“ちょっとした違和感”に気づいてあげることが大切です。

見た目に出る小さなサイン

  • 唇が乾いてカサついている
  • 口の中がネバネバしている
  • 尿の回数が少ない/色が濃い
  • なんとなく元気がない、ぼーっとしている
  • 食欲が落ちている
  • 微熱がある、顔が赤い
  • 皮膚のハリがない(手の甲をつまんで戻りが遅い)

これらのサインが1つでも当てはまる場合は、脱水の初期兆候かもしれません。

年齢別の気づきポイント

年齢層気づきポイント
乳幼児オムツの重さがいつもより軽い/おしっこが少ない/機嫌が悪い/泣いても涙が出ない
未就学児ほてった様子/動きが鈍い/目がうつろ/遊びをすぐやめる/トイレに行きたがらない
小学生水を飲みたがらない/「なんかだるい」と言う/頭が痛いと言う/汗のかき方にムラがある

見逃しやすい思い込みにも注意

  • 「汗をかいていない=脱水ではない」と思い込んでいませんか?
    → 室内や夜間でも水分は失われます。汗をかかない=安心とは限りません。
  • 「遊びに夢中=元気な証拠」と思っていませんか?
    → 楽しくても体は乾いているかもしれません。こまめな声かけと観察が大切です。

ちょっとしたサインを見逃さず、「もしかして…」と早めに気づけることが、重症化を防ぐ第一歩になります。
次章では、こうした気づきを活かしてできる具体的な予防法や家庭での対策をご紹介していきます。

「喉が渇いた」と言う前にできること!予防と対処法

隠れ脱水は、「喉が渇いた」と感じる前にすでに始まっていることがあります。
だからこそ、日常の中でこまめに水分を補う“習慣づくり”が大切です。

こまめに飲む習慣がカギ!水分補給のタイミング

以下のタイミングで少しずつ飲ませることで、体の中で乾きをため込まずに済みます。

  • 起床後:眠っている間にも水分は失われています
  • 遊びや外出の前後:暑さや運動による発汗に備える
  • 入浴前後:汗とともに水分が失われがち
  • 就寝前:夜間の渇きを防ぐ(飲みすぎは避ける)

💡ポイント:「喉が渇いていなくても、一口だけでも飲む」習慣が大切です

年齢・体重別の水分量の目安(1日あたり)

年齢層体重の目安必要水分量(1kgあたり)1日の目安量(飲料+食事)
乳児(0〜1歳)約7〜10kg約150ml/kg約1,050〜1,500ml
幼児(1〜6歳)約10〜18kg約100ml/kg約1,000〜1,800ml
学童(6〜12歳)約20〜40kg約80ml/kg約1,600〜2,800ml

※この量には食事に含まれる水分(味噌汁・果物など)も含まれます

実際に飲み物から補う量の目安

  • 食事から約40〜50%の水分が摂れると仮定すると、
    残りの50〜60%は飲み物から補う必要があります

例:幼児(15kg)の場合
→ 必要水分量:約1,500ml
→ 飲み物から補う量:約750〜900ml(1日)

こまめに分けると安心

1回で飲ませる量の目安(幼児〜学童):

  • 起床後:100〜150ml
  • 遊び前後:100mlずつ
  • 入浴前後:100mlずつ
  • 就寝前:50〜100ml

1回100ml前後を5〜6回に分けて飲ませると、負担なく補給できます。

何を飲ませる?水分の種類と注意点

飲み物特徴注意したい点
どこでも用意できる基本の水分電解質(塩分)不足には注意
麦茶ノンカフェイン・子どもに飲みやすい体調不良時には補水力が弱い
経口補水液水分+塩分+糖分で効率よく補える甘さや塩分が気になる場合も
スポーツドリンク塩分・糖分入りで飲みやすい糖分の多いものは薄めて使うのがおすすめ
手作り補水液砂糖・塩・水で作る簡易版味の調整や衛生管理に工夫が必要

🟦 補足:「水だけ」では不十分な場面もあります。汗をたくさんかいた後や食欲不振がある場合は、経口補水液などで電解質も補いましょう。

飲みやすくするちょっとした工夫

  • 冷たすぎない常温〜ぬるめにして、胃への負担を軽減
  • お気に入りのコップやストローで“飲みたくなる”演出
  • 1度にたくさんではなく、こまめに少量ずつ
  • 「おやつの前にひとくち」「お風呂の前に乾杯しよう」など、生活の中にセットで組み込む

日々のちょっとした工夫が、「喉が渇いてから飲む」ではなく、“乾く前に飲む習慣”へとつながります。
保護者のさりげない声かけが、お子さんの夏の体調を守る大きな力になるのです。

毎日の中でできる!声かけ&習慣化のアイデア

隠れ脱水の予防には、「喉が渇いてから」ではなく、“こまめに飲む習慣”を生活に取り入れることが大切です。
とはいえ、忙しい日常の中で意識し続けるのはなかなか難しいもの。そこで、家庭で自然に取り入れられる工夫をご紹介します。

声かけひとつで、飲むタイミングが変わる

ちょっとしたひと言が、水分補給のきっかけになります

  • 「ごはんの前に、お水ひとくち飲んでみようか」
  • 「おやつの前に乾杯しよう!」
  • 「お風呂の前に、喉うるおしておこうね」
  • 「今日はいっぱい動いたね。水分とろうか!」

🟡 ポイントは、「飲みなさい」よりも「一緒に飲もう」「〇〇だから飲もう」と前向きな誘導にすることです

日常の習慣に組み込む工夫

シーン水分補給と組み合わせるアイデア
起床時「おはようの一杯」習慣を定着させる
食事前「いただきます」の前にひとくち
外遊び・お散歩前後コップの準備をセットにする
入浴前後バスタイム=水分タイムを合言葉に
就寝前絵本の前に“寝る前の一杯”

習慣化のためには、「行動とセット」「家族みんなで」がポイントです。
子どもはリズムをつかむのが得意なので、生活のリズムに組み込むことで自然に身につきやすくなります。

保護者が気をつけたい見落としポイント

  • 「室内だから大丈夫」 → 室内でも乾燥・高温になることがあります
  • 「汗をかいてないから大丈夫」 → 水分は呼吸・皮膚・尿などからも失われます
  • 「麦茶は飲んでるから安心」 → 状況によっては塩分・糖分も必要な場合も

毎日の中でちょっとした変化に気づき、必要に応じて補水の質や量を見直すことが大切です。

習慣と声かけが合わさると、「飲ませる」から「一緒に習慣にする」へと変わります。
お子さんの気分や体調に合わせながら、少しずつ“水分をとる力”を育てていきましょう。

参考になる公的機関の情報

より詳しい情報を知りたい方は、以下の公的機関の資料も参考になります:

おわりに:小さな気づきが、大きな安心につながる

隠れ脱水は、症状が目立たない分、気づきにくく、子ども自身がうまく伝えられないこともあります。
だからこそ、保護者が日常の中で「ちょっと気になる変化」に気づき、声をかけてあげることが大切です。

そして、起床後やお風呂の前後など、決まったタイミングで少しずつ水分を補う習慣は、脱水の予防にも、お子さんの体調管理にもつながります。

このブログでご紹介した内容が、皆さんの日々の生活の中で「無理なく」「さりげなく」取り入れられるヒントになれば幸いです。
お子さんの元気な夏を守るために、ぜひできることから始めてみましょう。

各務原リハビリテーション病院では、予約なしでも小児科・内科の診療を行っております。
気になる症状やご不安なことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当