「膝が痛い…」を放置しないで!60代から始める膝痛対策と介護予防のポイント

「最近、階段の上り下りがつらくなった」「立ち上がるときに膝が痛む」——そんな声をよく耳にします。
年齢を重ねるにつれて、膝の痛みは多くの方が経験する悩みのひとつです。
「今は暑いから膝の痛みも落ち着いているけれど、冬になるとまたつらくなるかも…」
そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、寒さが厳しくなる冬は、膝の痛みが悪化しやすい季節です。
だからこそ、今のうちから膝のケアを始めることが、冬を快適に過ごす第一歩になります。痛みの原因や対処法を知ることで、日常生活をもっと快適に過ごすことができます。


このブログでは、膝痛の主な原因やセルフケアの方法、受診の目安などをわかりやすくご紹介します。
ご本人はもちろん、ご家族や介護に関わる方にも役立つ情報をまとめました。

膝痛の主な原因

膝の痛みにはさまざまな原因があります。
ここでは、高齢者に多く見られる代表的な疾患や状態について、特徴や症状をわかりやすくご紹介します。

1. 変形性膝関節症(へんけいせい ひざかんせつしょう)

  • 加齢や使いすぎによって、膝の軟骨がすり減る疾患です
  • 初期は「立ち上がるときに痛む」「階段の下りがつらい」といった症状が出やすく、進行すると膝の変形や強い痛みを伴うこともあります
  • 日本では高齢者の膝痛の原因として最も多く、特に女性に多い傾向があります

2. 筋力の低下・関節の硬さ

  • 年齢とともに太ももやふくらはぎの筋力が低下し、膝への負担が増します
  • また、関節周囲の柔軟性が失われることで、動き始めに痛みを感じることがあります
  • 「運動不足かな?」と思っていたら、実は筋力低下による膝痛だったというケースも少なくありません

3. 関節リウマチなどの炎症性疾患

  • 関節リウマチは、免疫の異常によって関節に炎症が起こる疾患です
  • 膝だけでなく、手指や足首など複数の関節に痛みや腫れが出ることが特徴です
  • 早期発見・治療が重要なため、「朝にこわばる」「左右両方の膝が痛む」などの症状がある場合は、医療機関への相談をおすすめします

4. その他の原因

  • 「過去のけが(骨折・靭帯損傷)」の影響
  • 体重増加による膝への負担
  • 姿勢や歩き方のクセによる慢性的な負担

上記でご紹介した内容を、以下の表にまとめました。
症状の傾向や放置した場合のリスクを整理していますので、ご自身やご家族の状態と照らし合わせながらご覧ください。

疾患名特徴初期症状放置リスク
変形性膝関節症軟骨のすり減り階段で痛む、こわばり進行すると歩行困難に
半月板損傷加齢や負荷で損傷引っかかり感、正座困難関節の不安定化
筋肉・腱の炎症運動不足や使いすぎ熱感、腫れ、痛み慢性化しやすい
筋力低下活動量の減少膝周りのだるさ転倒・要介護リスク増加

※症状が軽いうちに対処することで、進行を防ぎ、日常生活の質を保つことができます。


ご自身の症状に不安がある場合は、医師にご相談ください。

放置によるリスク

「年齢のせいかな」「そのうち治るだろう」と思っているうちに、膝の痛みが少しずつ生活に影響を及ぼすことがあります。

主なリスク

放置すると起こりやすいこと影響
痛みの慢性化日常動作がつらくなる階段の昇降、正座、立ち上がり
筋力低下・関節のこわばり動かしづらくなる歩幅が狭くなる、転倒リスク増加
変形性膝関節症の進行関節の変形・可動域制限O脚化、膝が曲がりにくくなる
他の関節や腰への負担二次的な痛みや不調反対側の膝、股関節、腰痛の悪化
外出・運動の減少心身の健康に影響筋力低下、気分の落ち込み、孤立感

チェックリスト

以下の項目に、最近「当てはまる」と感じるものはありますか?
3つ以上チェックがついた方は、膝の状態を一度専門家に相談することをおすすめします。

チェック項目内容
□ 階段の昇り降りがつらい特に下りで痛みが強い
□ 正座ができない/避けている膝が曲がりにくい
□ 立ち上がるときに膝が痛む初動時の痛み
□ 歩くと膝が重く感じる疲れやすく、だるさがある
□ 外出や運動が減ってきた動くのが億劫になっている
□ 膝が腫れている/熱っぽい炎症のサイン
□ 太ももの筋肉が落ちてきた筋力低下の兆候
□ O脚/X脚が気になる関節の変形傾向
□ 過去に膝を痛めたことがある再発リスクあり
*チェックが3つ以上の方へ

膝の状態が生活に影響を及ぼし始めている可能性があります。一度、医療機関での相談を検討してみましょう。

チェックが5つ以上の方へ

痛みや機能低下が進行している可能性があります。放置せず、早めの対処が将来の負担を減らします。
お気軽にご相談ください。

「年齢のせい」と思って見過ごしてしまう膝の違和感。
でも、早めに気づいて対処することで、これからの生活をもっとラクに、楽しくできます。
気になる項目があれば、どうぞお気軽にご相談ください。

関連する公的機関の情報ページ

膝痛の原因や治療法について、詳しく知りたい方は
国立長寿医療研究センターの膝痛情報ページをご覧ください。」

膝の健康を保つために、今できること

予防とセルフケアのポイント

ポイント内容継続のコツ
適度な運動ウォーキングや軽い体操で筋力維持毎日10分でもOK。天気の良い日に外へ
太もも・膝周りの筋トレ大腿四頭筋を鍛えると膝の負担軽減椅子に座って足上げ運動など簡単なものから
体重管理体重が膝への負担に直結食事記録や体重チェックを習慣に
正しい姿勢・歩き方猫背やO脚は膝に負担鏡で姿勢チェック、靴の選び方も大切
冷え対策冷えは痛みを悪化させることもレッグウォーマーや入浴で血流促進
無理をしない痛みがある日は休む勇気も必要「休む=悪いこと」ではないと意識する

膝の健康は、日々のちょっとした習慣で守ることができます。無理なく、できることから始めてみましょう。
もし不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

季節に合わせたセルフケア

春:活動再開の季節

  • 花粉や寒暖差に注意:膝の冷えやむくみに影響することも
  • おすすめケア:軽いストレッチから再開、朝晩の冷え対策にレッグウォーマー

夏:水分・冷房・屋外活動

  • 水分不足→関節の潤滑低下:痛みが出やすくなる
  • 冷房による冷え:膝周りの血流が悪化
  • おすすめケア:こまめな水分補給、冷房時は膝掛けや長ズボン

秋:運動に最適な季節

  • 気候が安定し、活動しやすい
  • おすすめケア:ウォーキング再開、筋トレ習慣づくりのチャンス
  • 注意点:朝晩の冷え込みに備えて、膝を温める工夫を

冬:冷えと転倒リスク

  • 膝のこわばり・痛みが強くなりやすい
  • 転倒による膝のケガも増加
  • おすすめケア:入浴で膝を温める、滑りにくい靴、室内でできる運動

季節によって膝への負担やケアのポイントは変わります。
「今の季節に合ったケア」を意識することで、膝の健康をより長く守ることができます。

関連する公的機関の情報ページ

「厚生労働省では、変形性ひざ関節症の方向けに
椅子や床でできる運動プログラム(PDF)を紹介しています。」

医療機関からのアドバイスと受診の目安

膝の痛みは、年齢のせいだからと我慢してしまう方が多くいらっしゃいます。
ですが、放っておくことで痛みが慢性化したり、関節の変形が進んだりすることもあります。

私たち医療機関では、「まだ軽いうち」「不安なうち」のご相談を歓迎しています。
早めに状態を確認することで、負担の少ない対処法や予防策をご提案できることも多いのです。

「受診=すぐに治療」ではありません。
お話を伺いながら、その方に合ったケアの方法を一緒に考えるのが私たちの役割です。

気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
ご自身の膝と、これからの生活を守るために――今できることから始めましょう。

受診のタイミング(こんなときは相談を)

症状受診の目安
痛みが2週間以上続く慢性化の可能性あり
階段や正座が困難関節の機能低下が進行中
朝のこわばりがある炎症や変形の兆候かも

これらの症状がある方は、早めの受診がおすすめです。

診断と治療(医療機関でできること)

内容説明
レントゲンで原因を特定痛みの根本を把握できます
リハビリ・運動療法の提案痛みを和らげ、動きを改善

治療だけでなく、予防や生活改善のサポートも行っています。

膝の痛みは、早めに相談することで、治療だけでなく予防の選択肢も広がります。
ご自身の膝と、これからの生活のためにどうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

膝の痛みは、年齢とともに多くの方が経験する悩みですが、原因や対処法を知ることで、日常生活をより快適に過ごすことができます。
このブログでは、膝痛の主な原因、放置によるリスク、セルフケアのポイント、そして医療機関でできることをご紹介しました。特に、季節の変化や生活習慣に合わせたケアは、膝の健康を守るうえでとても大切です。
「まだ大丈夫」と思っていても、気づかないうちに痛みが進行していることもあります。
気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。ご自身の膝と、これからの生活のために――今できることから、始めてみませんか?

各務原リハビリテーション病院では、日常生活に寄り添った診療を行いながら、必要に応じて手術対応可能な医療機関とも連携しています。
令和7年8月より、整形外科の外来診療を拡大し、予約なしで整形外科専門医による診療を受けていただけます。「ちょっと気になるな」と思ったときに、どうぞお気軽にご相談ください。

監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当

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