小学生・中学生のかかとの痛みは“シーバー病”?成長期の骨トラブルと予防法

最近、運動のあとに“かかとが痛い”と訴える小学生・中学生が増えています。
これは、成長期に起こりやすい“シーバー病(踵骨骨端症)”という骨のトラブルかもしれません。
放置すると運動がつらくなったり、歩き方に影響が出ることも。
今回は、成長期の骨の特徴やよくある症状、家庭でできる予防法などをご紹介します。
小学生・中学生のかかとの痛み、それって?
成長期に多い「踵骨骨端症」とは
シーバー病(踵骨骨端症)は、成長期の子どもに多く見られる足の障害のひとつです。特に小学生高学年から中学生前半にかけて、スポーツをしているお子さんに多く発症します。
病名の「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」は、かかとの骨(踵骨)の成長部分=骨端線に炎症が起きる状態を指します。骨端線は、骨が成長するための柔らかい部分で、成長期には活発に変化しています。この部分に繰り返しの衝撃や負荷が加わると、炎症や痛みが生じるのです。
特に、サッカー・バスケットボール・陸上など、走る・跳ぶ動作が多いスポーツでは、かかとへの負担が大きくなり、発症リスクが高まります。運動後に「かかとが痛い」と訴える、歩き方が変わる、靴を履きたがらないなどの様子が見られたら、注意が必要です。 シーバー病は、骨折のように画像で明確に映るものではなく、診察や触診で判断することが多いため、見逃されやすい傾向があります。放置すると、痛みが慢性化したり、運動を避けるようになったりすることもあるため、早めの対応が大切です。
症状のチェックポイント表
よくある症状 | ご家庭でのチェックポイント |
かかとの痛み | 運動後に痛みを訴える/朝に違和感がある |
歩き方の変化 | つま先歩きになる/足を引きずるようになる |
靴の履き方 | かかと部分を嫌がる/靴を脱ぎたがる |
運動への影響 | 好きだった運動を避けるようになる/走るのを嫌がる |
✅ これらの症状が複数当てはまる場合は、無理に運動を続けず、休息とケアを心がけましょう。
💡 補足:シーバー病は骨折ではありませんが、放置すると慢性化することも。早めの対応が、長くスポーツを楽しむための第一歩です。
成長期の骨はなぜ痛みやすい?スポーツとの関係
骨端線の仕組みと運動による負荷
成長期の子どもの骨には、「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる柔らかい部分があります。これは、骨が縦に伸びるための「成長の窓」のようなもので、小学生高学年〜中学生前半にかけて特に活発に働いています。
骨端線は、まだ硬くなりきっていないため、繰り返しの衝撃や引っ張る力に弱いという特徴があります。ジャンプやダッシュ、方向転換などの動作を繰り返すことで、骨端線に負担がかかり、炎症や痛みが生じることがあります。
特に、かかとの骨(踵骨)は地面からの衝撃を直接受けるため、骨端線が刺激されやすく、シーバー病の原因となるのです。
どんなスポーツで起こりやすい?
シーバー病は、走る・跳ぶ・止まる・方向を変えるといった動作が多いスポーツで発症しやすい傾向があります。
よく見られる競技と動作の例
スポーツ | 特徴的な動作 | 発症リスク |
サッカー | ダッシュ・キック・急停止 | 高い |
バスケットボール | ジャンプ・着地・方向転換 | 高い |
陸上競技(短距離) | スタートダッシュ・繰り返しの衝撃 | 高い |
バレーボール | ジャンプ・着地・スライド | 中〜高 |
野球 | スプリント・守備時の動き | 中程度 |
特に「週に何度も練習がある」「大会前で運動量が多い」などの状況では、かかとへの負担が蓄積しやすくなります。
💡補足:成長期の骨は“未完成”だからこそ守ってあげたい 骨端線は、15〜16歳頃に閉じて骨が完成するまでの期間、とても繊細です。この時期に無理をすると、痛みだけでなく、骨の成長そのものに影響が出ることもあるため、早めのケアが大切です。
よくある症状と家庭でできるチェックポイント
痛みの特徴と行動の変化
シーバー病によるかかとの痛みは、運動後や朝起きたときに強くなるのが特徴です。
子ども自身が「痛い」と言わなくても、日常の動作や行動の変化から気づけることがあります。
よく見られる行動の変化
- 歩き方がぎこちない(つま先歩きになる)
- 走るのを嫌がる、途中で止まる
- 靴を履くと痛がる、かかとを気にする
- 練習後に「かかとが痛い」と言う
- 朝起きてすぐに足を引きずるような動きがある
特に、運動後に痛みが強くなる場合は、骨端線への負担が蓄積している可能性があります。

チェックリストで確認してみましょう
以下の項目に2つ以上当てはまる場合は、かかとの骨に負担がかかっている可能性があります。
一度、整形外科での診察を検討してみましょう。
チェック項目 | はい・いいえ |
運動後に「かかとが痛い」と言う | □ はい □ いいえ |
朝起きたときに足を引きずる | □ はい □ いいえ |
歩き方が不自然(つま先歩きなど) | □ はい □ いいえ |
靴を履くときに痛がる・嫌がる | □ はい □ いいえ |
練習中に走るのを避けるようになった | □ はい □ いいえ |
早めに気づいてあげることで、痛みの悪化や長期化を防ぐことができます。
痛みがあるときは、無理に運動を続けず、休息とケアを優先しましょう。
シーバー病の予防法:家庭でできるケアと靴選び
アイシングとストレッチのポイント
かかとの痛みが出たとき、まず大切なのは炎症を抑えることです。
運動後や痛みが強いときは、「アイシング(冷却)」が効果的です。
アイシングの方法
- 保冷剤や氷をタオルで包み、かかとの下に10〜15分ほど当てる
- 1日2〜3回まで(運動後・入浴後など)
- 直接肌に当てないよう注意
痛みが落ち着いてきたら、ふくらはぎや足裏のストレッチを取り入れることで、かかとへの負担を減らすことができます。
おすすめストレッチ
- ふくらはぎのストレッチ:壁に手をついて片足を後ろに伸ばす
- 足裏のマッサージ:ゴルフボールやペットボトルを足裏で転がす
- アキレス腱の伸ばし:椅子に座って片足を前に伸ばし、つま先を手で引き寄せる
継続することで、筋肉の柔軟性が高まり、再発予防にもつながります。
靴の選び方と運動量の調整
靴は、かかとを守るための「防具」のような存在です。
サイズやクッション性が合っていないと、かかとに直接負担がかかりやすくなります。
靴選びのポイント
チェック項目 | 理由 |
かかとがしっかり固定される | 骨端線への衝撃を減らす |
クッション性がある中敷き | 着地時の負担を吸収 |
サイズがぴったり(大きすぎない) | 足の動きが安定する |
通気性が良く、蒸れにくい | 長時間の使用でも快適 |
必要に応じて、整形外科でインソール(足底板)を処方してもらうのも有効です。
食事でできる骨ケアも忘れずに
シーバー病は運動による負荷が主な原因ですが、骨の修復力や炎症の抑制には栄養も大切です。
成長期の骨がしっかり育つよう、日々の食事にも少しだけ意識を向けてみましょう。
骨の健康を支える栄養素
栄養素 | 働き | 主な食品例 |
カルシウム | 骨の材料になる | 牛乳、ヨーグルト、小魚、青菜類 |
ビタミンD | カルシウムの吸収を助ける | 鮭、しらす、卵、きのこ類(+日光) |
タンパク質 | 骨や筋肉の修復に必要 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
オメガ3脂肪酸 | 炎症を抑える働き | 青魚、亜麻仁油、くるみ |
成長期におすすめの食事習慣
- 朝食を抜かない(骨の成長は夜〜朝にかけて活発)
- 牛乳やヨーグルトを毎日1回は取り入れる
- 魚や豆製品を週に数回は食べる
- お菓子やジュースを控えめに(糖分過多はカルシウムの吸収を妨げる)
- 外遊びや日光浴も骨の健康にプラス
💡補足:「食事で骨を強くする」というよりも、“骨が育ちやすい環境を整える”という意識が大切です。栄養・運動・休息のバランスが、シーバー病の予防にもつながります。
運動量の調整も大切
痛みがあるときは、練習を休む勇気も大切です。
「週に何回まで」「痛みが出たら休む」など、家庭でルールを決めておくと安心です。
また、ジャンプやダッシュが少ない運動(スイミング・自転車など)に切り替えることで、回復期間中も体力を維持できます。
💡補足:「痛みが出たらすぐケア」「靴を見直す」「運動量を調整する」
この3つを意識することで、シーバー病の予防と再発防止につながります。
受診の目安と整形でできること
痛みが続くときはどうする?
かかとの痛みが数日以上続く、または運動を休んでも改善しない場合は、整形での診察をおすすめします。
特に以下のようなケースでは、早めの受診が安心につながります:
- 痛みで歩き方が変わっている
- 朝起きると足を引きずるような動きがある
- 痛みが強くなってきている
- 両足に痛みが出ている
- 学校生活や部活動に支障が出ている
「成長期だから仕方ないかな…」と様子を見るうちに、痛みが慢性化してしまうことも。
早めに専門家に相談することで、安心して運動を続けるための道筋が見えてきます。
整形でのサポート
整形では、子どもの成長に合わせたやさしいサポートをしてくれます。
診察では、痛みの原因を丁寧に確認し、必要に応じて以下のような対応が行われます:
整形でできること
- レントゲン検査で骨の状態を確認(骨折や他の疾患との区別)
- インソール(足底板)の処方でかかとへの負担を軽減
- 運動の調整や休養のアドバイス(部活とのバランスも考慮)
- ストレッチやケア方法の指導(家庭でできる内容も)
- 必要に応じてリハビリや理学療法士によるサポート
医師やスタッフは、「運動を続けたい」という気持ちにも寄り添ってくれる存在です。
「痛みを我慢する」ではなく、「痛みと上手につき合う」ための方法を一緒に考えてくれます。
💡補足:受診は、子どもにとっても「安心できるきっかけ」になります。
保護者の「ちょっと気になるな」という感覚を、大切にしてあげてください。
成長期の骨を守るために、今できること
お子さまの「痛いかも…」に耳を傾けて
成長期の骨は、未来に向かってぐんぐん伸びている途中。
その分、繊細で、ちょっとした負担にも敏感に反応します。
「運動が好きなのに、最近走りたがらない」
「靴を履くときに、かかとを気にしている」
そんな小さなサインが、骨からの“休ませて”というメッセージかもしれません。
保護者の方が気づいてあげることで、痛みの悪化を防ぎ、安心して成長を続けることができます。
気になる症状があれば、どうぞご相談ください
各務原リハビリテーション病院からのお知らせ
当院では、外科的な手術は行っておりませんが、整形の診療を通じて、成長期のお子さまの骨の痛みに寄り添ったサポートを行っています。
✅ 骨や関節の状態を確認する診察
✅ 痛みの原因やケア方法のご説明
✅ ご家庭でできる予防や運動のアドバイス
✅ 必要に応じたインソール(足底板)のご提案
令和7年8月より、整形の外来診療を拡大し、予約なしで整形外科専門医による診療を受けていただけるようになりました。
「手術が必要なのでは…?」と不安になる前に、まずは診療でできることから始めてみませんか?
お子さまの「今」と「これから」を守るために、私たちは一緒に考えていきます。
どうぞお気軽にご相談ください。
💡補足:「痛みを我慢させない」「気づいたらすぐケアする」それが、成長期の骨を守るいちばんの予防法です。
監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当