【小学生・中学生】朝起きられないのは“自律神経の乱れ”?体調不良の見極め方

新学期が始まって2週間。まだまだ暑さが残るこの時期、朝の支度に時間がかかったり、「だるそう」「食欲がない」といった様子が気になるお子さんも多いのではないでしょうか。
実はこのような不調、気温差や生活リズムの乱れによって“自律神経”がうまく働かなくなっているサインかもしれません。
特に小学生・中学生は、体の変化をうまく言葉にできず、保護者が気づきにくいことも。
今回は、そんな「朝起きられない」「なんとなく元気がない」といった症状の背景にある自律神経の乱れについて、小児科・内科的な視点から、見極め方と家庭でできるケアのヒントをご紹介します。
まだ暑いのに新学期…子どもの不調が気になる時期です
生活リズムの乱れが体調に影響する理由
新学期が始まると、夏休み中の生活リズムから一気に学校モードへと切り替わります。
しかし、今年のように残暑が厳しいと、体がうまく順応できず「朝起きられない」「だるそう」「食欲がない」といった不調が出やすくなります。
医学的には、こうした変化は自律神経の働きに大きく関係しています。
自律神経は、体温調節・睡眠・消化・血圧などをコントロールする“自動調整システム”のようなもので、生活リズムの乱れや気温差によってバランスを崩しやすくなります。
特に小学生・中学生は、成長期にあたるためホルモンバランスや神経系がまだ未成熟で、環境の変化に敏感です。
夜更かしや朝食抜き、スマホの長時間使用なども、自律神経の乱れを助長する要因となります。
保護者が「ちょっと変かも」と感じるタイミング
子どもは体調の変化をうまく言葉にできないことが多く、保護者の「なんとなく元気がない」「いつもと違う気がする」という直感が重要なサインになります。
以下のような様子が見られたら、生活リズムや自律神経の乱れを疑ってみてもよいかもしれません:
- 朝、起きるのに時間がかかる/不機嫌
- 食欲がない/好きなものでも食べたがらない
- 学校の話をしたがらない/ぼんやりしている
- 頭痛・腹痛を訴えるが、熱はない
- 以前より疲れやすく、帰宅後すぐ横になる
こうした症状は、起立性調節障害(OD)などの初期サインである場合もあります。
もちろんすべてが病気ではありませんが、「1週間以上続く」「日常生活に支障が出ている」場合は、小児科での相談をおすすめします。
自律神経ってなに?子どもの体調とどう関係するの?
交感神経と副交感神経のしくみ
自律神経は、「交感神経(活動モード)」と「副交感神経(休息モード)」の2つから成り立っています。
この2つがバランスよく働くことで、体は「朝は元気に活動」「夜はしっかり休息」というリズムを保てます。
神経の種類 | 働き | 活性化する時間帯 |
交感神経 | 心拍数・血圧を上げる/集中力を高める | 朝〜昼 |
副交感神経 | 体を休める/消化を促す/眠気を誘う | 夜〜睡眠中 |

子どもはこのバランスがまだ不安定で、生活リズムや環境の変化に大きく左右されます。
特に新学期は、早起き・授業・人間関係などの刺激が一気に増えるため、交感神経が過剰に働き、疲れやすさや不調につながることがあります。
気温差・ストレス・睡眠不足が乱れの原因に
自律神経は、外部環境の変化にとても敏感です。
以下のような要因が重なると、バランスが崩れやすくなります:
- 気温差:朝晩の寒暖差が大きいと、体温調節に負担がかかる
- ストレス:学校生活の緊張や人間関係の不安
- 睡眠不足:夜更かしやスマホの使用で睡眠の質が低下
- 食生活の乱れ:朝食抜きや偏食が続くと、エネルギー不足に
これらが重なると、交感神経が過剰に働き、副交感神経がうまく切り替わらず、「朝起きられない」「だるい」「集中できない」といった症状が現れます。
小学生・中学生に多い“自律神経の乱れ”による症状とは
朝起きられない/食欲がない/だるい/集中できない
小学生・中学生の自律神経が乱れると、以下のような症状が現れやすくなります:
- 朝起きられない:目覚ましで起きられず、起床後もぼんやりしている
- 食欲がない:好きな食べ物でも手をつけず、朝食を抜きがち
- だるい・疲れやすい:学校から帰るとすぐ横になる、活動量が減る
- 集中できない:授業中にぼんやりする、宿題に取りかかれない
これらは、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないことで起こる「自律神経のアンバランス」が原因のひとつです。
特に新学期は、環境の変化や緊張が重なり、交感神経が過剰に働いて疲れが溜まりやすくなる傾向があります。
風邪や感染症との違い
症状 | 自律神経の乱れ | 風邪・感染症 | 見分けのポイント |
朝起きられない | ◎ | △ (発熱があれば注意) | 熱がない/だるさが続く |
食欲がない | ◎ | ○ (胃腸炎など) | 吐き気や下痢がなければ自律神経の可能性も |
頭痛・腹痛 | ○ | ○ | 時間帯や頻度に注目(朝だけなら自律神経かも) |
だるさ・疲れやすさ | ◎ | △ (発熱や炎症があれば注意) | 長引く場合は医師に相談を |
家庭でできる生活リズムの整え方
朝の光を浴びる/起床・就寝時間の固定
朝の光を浴びることは、体内時計を整え、自律神経を「活動モード」に切り替える大切なスイッチです。
特に起床後30分以内に自然光を浴びることで、交感神経がしっかり働き始め、眠気やだるさが軽減されます。
また、起床・就寝時間を毎日できるだけ一定に保つことで、体のリズムが安定しやすくなります。
休日に寝坊しすぎると、月曜の朝に「起きられない」「だるい」といった不調が出やすくなるため、**“週末も平日と近い時間に起きる”**ことがポイントです。
水分補給・軽い運動・スマホ時間の見直し
朝起きたらまずコップ1杯の水を飲むことで、副交感神経から交感神経への切り替えがスムーズになります。
また、軽いストレッチや深呼吸などの運動は、血流を促し、眠気を和らげる効果があります。
スマホやゲームは、使い方によっては睡眠の質を下げる原因になりますが、完全に禁止するより“夜モード”に切り替える工夫が効果的です。
スマホの使い方 | 副交感神経への影響 | 工夫ポイント |
SNS・ゲーム | × 刺激が強く眠気を妨げる | 夜は通知オフ・時間制限 |
Webマンガ | △ 内容によっては興奮する | ナイトモード+読むだけ |
音楽アプリ | ◎ リラックス効果あり | タイマー+ヒーリング系選曲 |
「スマホはダメ」ではなく、「夜は“休むための使い方”に切り替える」ことで、子ども自身が納得しやすく、生活リズムの改善にもつながります。
寝る前のリラックスルーティン
副交感神経を優位にするには、“眠る前の過ごし方”がとても大切です。
スマホやゲームの代わりに、自分のペースで楽しめて、気持ちが落ち着く習慣を取り入れることで、自然と眠気を誘い、睡眠の質も高まります。
おすすめは、以下のようなリラックス習慣:
- 音楽を聴く(自然音・Lo-fi・ヒーリング系など)
- Webマンガやライトノベルを“読むだけ”で楽しむ
- ストレッチや深呼吸で体をゆるめる
- 間接照明やアロマで“夜モード”の空間をつくる
- ぬるめのお風呂+お気に入りのパジャマで安心感を
こうした習慣は、子どもが「自分で選べる」「自分で整えられる」感覚を持てるため、思春期の自立心にも寄り添った提案になります。
受診の目安と小児科や内科的視点のアドバイス
だるさや頭痛・腹痛などの不定愁訴
小学生・中学生の時期は、心身の成長にともない「だるい」「頭が痛い」「お腹が痛い」といった「原因がはっきりしない不調(不定愁訴)」が現れやすくなります。
これらは、以下のような要因が複雑に絡み合っていることがあります:
- 自律神経の乱れ(起立性調節障害など)
- 睡眠不足や生活リズムの乱れ
- 学校生活のストレスや緊張
- 食事・水分・運動などの生活習慣の偏り
特に「朝だけ症状が強い」「学校に行くと落ち着く」「検温しても異常がない」といった場合は、身体的な病気ではなく、自律神経や心理的な要因が関係している可能性があります。
各務原リハビリテーション病院では、こうした不調に対しても、小児科・内科的な視点から生活背景や心身のバランスを丁寧に見守る診療を行っています。
「なんとなく元気がない」が続くときの対応
「いつもより元気がない」「好きなことにも反応が薄い」「表情が乏しい」など、保護者の「なんとなく気になる」という感覚は、非常に大切な“気づき”のサインです。
以下のような状態が1週間以上続く場合は、小児科・内科での相談をおすすめします:
- 朝の不調が毎日続く
- 学校に行きたがらない/話したがらない
- 頭痛や腹痛を頻繁に訴えるが、検温では異常なし
- 表情が乏しく、好きなことにも反応が薄い
- 食欲が落ちている/眠りが浅い
こうした不調は、自律神経の乱れや起立性調節障害、心理的な負担などが背景にあることもあります。
各務原リハビリテーション病院では、保護者の「気になる」という声を大切にしながら、身体・心・生活のバランスを総合的に見守る診療を行っています。
まとめ|保護者の“気づき”が子どもの健康を守ります
新学期は、子どもたちの心と体にとって大きな変化の時期です。
「朝起きられない」「なんとなく元気がない」「だるそうにしている」——そんな小さな変化こそ、保護者の目にしか映らない大切なサインかもしれません。
自律神経の乱れや生活リズムの崩れは、見過ごされがちですが、早めに気づいて整えていくことで、体調不良を防ぐことができます。
各務原リハビリテーション病院では、こうした「はっきりしない不調」にも、小児科・内科の視点から丁寧に対応し、必要に応じて専門的な連携も行っています。 また、予約なしでも内科・小児科の診療を行っておりますので、「病院に行くほどではないかも…」と迷う時こそ、どうぞお気軽にご相談ください。
保護者の“気づき”に寄り添いながら、子どもたちが安心して過ごせる毎日を一緒に支えていきたいと考えています。
参考リンク:
・e-ヘルスネット|自律神経失調症(厚生労働省)
・文部科学省|中高生の生活習慣と心身への影響(PDF)
監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当