秋の感染症注意報|インフル・RS・ニンバス株…今年の流行はなぜ早い?

秋の気配が感じられるようになったこの頃。朝晩の涼しさに季節の移ろいを感じる一方で、感染症の流行はむしろ加速しています。
例年10月下旬以降に増加傾向となる感染症が、今年は9月の段階で流行期に入っており、各疾患ともに1か月以上早い立ち上がりを示しています。
岐阜県内でもインフルエンザによる学級閉鎖が報告されており、RSウイルスや新型コロナウイルス(ニンバス株)も含め、複数の感染症が同時に広がっている状況です。
こうした早期の流行には、猛暑による換気不足、夏の疲れによる免疫力の低下、新学期による接触機会の増加など、複数の要因が関係していると考えられます。
さらに、コロナ禍で感染症の流行が抑えられていた数年間の影響により、社会全体の免疫が低下している「免疫ギャップ」も指摘されています。
「まだ暑いから大丈夫」と思っていたら、すでに流行のピークが始まっている可能性もあります。
本記事では、現在の感染症の動向と、家庭でできる予防策、そして予防接種のタイミングについて、医療機関としての視点からお伝えいたします。
今年の感染症流行が早まっている主な要因
- 猛暑による換気不足
高温のため窓を閉め切る時間が長くなり、室内の空気が滞留。ウイルスが拡散しやすい環境に。 - 夏の疲れによる免疫力の低下
睡眠不足・食欲不振・冷たい飲食物の摂取などが重なり、体力や免疫機能が低下しやすい時期。 - 新学期による接触機会の増加
学校や保育園などで人の動きが活発になり、集団生活の再開が感染拡大の契機に。 - 海外との往来によるウイルスの早期流入
夏の渡航により、南半球で流行していたインフルエンザ株などが国内に早期に持ち込まれた可能性。 - 免疫ギャップの影響
コロナ禍で感染症の流行が抑えられていた数年間の影響で、社会全体の免疫が低下。感染しやすい人が増加。
岐阜県で流行中の感染症
現在、岐阜県内では複数の感染症が同時に流行しており、医療機関への受診件数も増加傾向にあります。特に以下の疾患については、家庭や学校での注意が必要です。
インフルエンザ|学級閉鎖も出るほどの広がり
- 例年より早く流行期に入り、すでに学級閉鎖が報告されている地域もあります。
- 高熱、頭痛、関節痛、倦怠感などの症状が急激に現れるのが特徴。
- 特に小児や高齢者では、肺炎や脳症などの合併症に注意が必要です。
- 早期の受診と、家庭内での感染拡大防止が重要です。
RSウイルス|乳幼児に多く、重症化リスクも
- 生後6か月未満の乳児や基礎疾患のあるお子さんは重症化しやすいため、早めの対応が求められます。
- 初期症状は鼻水や咳ですが、進行すると呼吸困難やゼーゼー音(喘鳴)を伴うことがあります。
- 兄弟間での感染も多く、保育園・幼稚園での流行が家庭に波及するケースも見られます。
新型コロナウイルス(ニンバス株)|子どもの“のどの激痛”が特徴
- 現在流行している「ニンバス株」は、子どもに強い喉の痛み(“カミソリ喉”)を引き起こす傾向があります。
- 発熱や咳が目立たない場合もあり、「風邪かな?」と思っていたら急激に悪化するケースも。
- 学校や習い事などでの接触を通じて広がるため、症状が軽くても油断せず、早めの受診が推奨されます。
こうした状況は、医療現場だけでなく、公的機関のデータにも表れています。
厚生労働省の定点報告によれば、2025年9月〜10月のインフルエンザ報告数は前年同期を大きく上回り、流行の立ち上がりが例年より早まっていることが確認されています。
また、新型コロナウイルス(ニンバス株)についても、「監視下の変異株」として注目されており、咽頭痛を中心とした症状が報告されています。
👉 厚生労働省|インフルエンザに関する報道発表資料
👉 厚生労働省|新型コロナウイルス感染症の発生状況(2025年)
家庭でできる感染症対策の再確認
感染症の流行が早まっている今、家庭内での予防意識を高めることがとても重要です。
医療機関として、以下のような基本的な対策を改めてご紹介します。
基本の感染予防行動
- 手洗い・うがいの徹底
外出後や食事前、帰宅時など、こまめな手洗いを習慣に。石けんと流水で20秒以上が目安です。 - マスクの着用
咳やくしゃみがある場合はもちろん、混雑した場所では予防的な着用も有効です。 - 換気と加湿
室内の空気を入れ替えることでウイルスの滞留を防ぎます。乾燥は粘膜の防御力を下げるため、加湿も大切です。
家庭内での工夫
- タオルや食器の共有を避ける
家族間でも感染が広がることがあるため、個別に使う習慣を。 - ドアノブやスイッチなどの消毒
手が触れる場所は定期的に拭き取りましょう。アルコールや次亜塩素酸水などが有効です。 - 体調不良時は無理をせず休養を
「少しだるい」「喉が痛い」などの初期症状を見逃さず、早めの休養と受診を心がけましょう。
家族で予防意識を共有する
- 小さなお子さんには、絵本やイラストを使って「手洗いの大切さ」などを伝えると効果的です。
- 高齢のご家族には、加湿や水分補給の声かけを。
- 家族全員で「予防は思いやり」と共有することで、自然と行動が変わります。
体調を整える食事・飲み物
感染症予防には、手洗いや換気といった外的な対策だけでなく、体の内側から整えることも大切です。
季節の変わり目は、気温差や乾燥で体調を崩しやすくなるため、以下のような食事や飲み物を意識してみましょう。
おすすめの食べ物
- 根菜類(にんじん・れんこん・ごぼうなど)
体を温め、腸内環境を整える食物繊維が豊富。煮物や味噌汁に取り入れやすい。 - きのこ類(しいたけ・しめじ・えのきなど)
免疫細胞を活性化するβグルカンが含まれ、秋の食卓にもなじみやすい。 - 発酵食品(納豆・味噌・ヨーグルトなど)
腸内環境を整え、免疫力を高める働きが期待されます。 - たんぱく質(鶏肉・卵・豆腐など)
体力回復や免疫細胞の材料となる栄養素。毎食に少しずつ取り入れるのが理想的。
おすすめの飲み物
- 白湯(さゆ)
胃腸を温め、体の巡りを整える基本の飲み物。朝の一杯におすすめ。 - 生姜湯・はちみつレモン
喉の違和感があるときや、冷えを感じるときに。殺菌作用や抗炎症作用も期待できます。 - 緑茶・ほうじ茶
カテキンによる抗菌作用があり、食後や外出後の一杯に最適。
予防接種のタイミングと注意点
感染症の流行が早まっている今年は、予防接種のタイミングにも注意が必要です。
特にインフルエンザワクチンは、流行のピーク前に免疫をつけておくことが重要です。
インフルエンザワクチンはいつ受ける?
- 岐阜県内では、10月上旬から接種を開始している医療機関が多くあります。
- 接種後、免疫がつくまでに約2週間かかるため、遅くとも11月初旬までの接種が推奨されます。
- 今年は流行が早いため、「例年より早めの接種」が安心材料になります。
子ども・高齢者の接種時のポイント
- 13歳未満の小児は、2回接種が必要です(1回目と2回目の間隔は2〜4週間)。
- 高齢者や基礎疾患のある方は、重症化予防のためにも早期接種が望ましいです。
- 接種当日は、体調が安定していることが前提です。発熱や強い倦怠感がある場合は、医師の判断を仰ぎましょう。
接種予約と確認事項
- 医療機関によっては、事前予約制や接種日が限定されている場合があります。
- 接種対象年齢や費用、持ち物(保険証・母子手帳など)も事前に確認しておくと安心です。
- 岐阜県の高齢者インフルエンザ予防接種助成制度など、自治体の支援制度も活用しましょう。
当院での予防接種について
当院では、インフルエンザおよび新型コロナウイルス(ニンバス株)に対応した予防接種を10月1日(水)より実施しています。
ご希望の方は、早めのご予約をお願いいたします。
- 接種日:月〜土曜・祝日 午前9:00〜12:00/月〜金曜 午後13:00〜17:00
- 対象年齢・費用:年齢や接種内容により異なります。詳細はご案内PDFをご確認ください。
- 予約方法:お電話にて承ります(058-384-8485/受付時間 8:30〜17:15)
また、当院では昨シーズンより導入された鼻腔噴霧式インフルエンザ生ワクチン「フルミスト」にも対応しています。
このワクチンは、注射ではなく鼻にスプレーするタイプで、身体的・心理的負担が少ないのが特徴です。
13歳未満の方でも1回接種で済むため、接種回数の負担軽減にもつながります。
副反応や対象年齢などの詳細は、お気軽にご相談ください。
各務原リハビリテーション病院 TEL:058-384-8485
おわりに|「秋だから安心」ではなく「今こそ備えを」
季節の変わり目は、気温や湿度の変化に加え、生活リズムの揺らぎも重なり、体調を崩しやすい時期です。
今年は、インフルエンザ・RSウイルス・新型コロナウイルス(ニンバス株)など、複数の感染症が例年より早く流行しています。
「秋だからまだ大丈夫」と思っていたら、すでに流行のピークが始まっている可能性もあります。
今こそ、家庭でできる予防策や体調管理を見直し、家族みんなで“備える秋”を過ごしていきましょう。
各務原リハビリテーション病院では、初めての方でもご予約なしで診療を受けていただけます。
ただし、事前にお電話やオンライン予約をご利用いただくと、よりスムーズにご案内できます。
また、発熱・咳・のどの痛みなどの症状がある場合は、感染予防のため、事前にお電話でのご相談やオンライン予約をお願いしております。
お子さまや他の患者さまが安心してご利用いただけるよう、皆さまのご協力をお願い申し上げます。
なお、インフルエンザおよび新型コロナワクチンは10月1日より接種を開始しております。
当院では、注射が苦手なお子さまにも配慮し、経鼻ワクチン(フルミスト)にも対応しております。
地域の皆さまが安心して秋を過ごせるよう、今後もわかりやすく、実践的な医療情報を発信してまいります。
どうぞ健やかにお過ごしください。
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監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当