RS・インフル・ニンバス株…咳で眠れない子どもに今できる対処法

小さなお子さんが夜中に咳き込むと、眠れずにぐったりしてしまうことがあります。咳が続くことで睡眠が妨げられるのは、子ども本人だけでなく、看病するご家族にも大きな負担となります。
現在、RSウイルス、インフルエンザ、新型コロナウイルス(ニンバス株)などの感染症が流行しており、咳が長引くケースも増えています。
この記事では、咳の仕組みや対処のポイントを整理して、ご家庭でできるケアについてわかりやすくご紹介します。
今流行している感染症と咳の関係
秋の深まりとともに、呼吸器系の感染症が複数同時に流行しています。特に小児では、咳が長引いたり、夜間に悪化するケースが目立ちます。現在(2025年10月)日本で流行している感染症には、RSウイルス感染症、インフルエンザ、新型コロナウイルス(ニンバス株)があり、それぞれ咳の症状や重症化リスクに違いがあります。ここでは、その3つの感染症について、咳との関連を中心に解説します。
RSウイルス感染症
対象年齢:主に2歳以下の乳幼児
症状の特徴:
- 発熱、鼻水、咳などのかぜ様症状から始まり、数日後に細気管支炎や肺炎に進行することがあります。
- 咳は湿った感じで、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴を伴うことも。
- 生後6か月未満の乳児では、呼吸困難や哺乳困難を引き起こすことがあり、注意が必要です。
流行状況:2025年は例年より早く、1月下旬から報告数が増加。現在も一部地域で高い水準を維持しています。
咳との関係:気道の炎症が強く、夜間に咳が悪化しやすい。特に横になると呼吸が苦しくなることがあり、睡眠が妨げられる原因となります。
インフルエンザ(季節性)
対象年齢:全年齢(特に学童期に多い)
症状の特徴:
- 急な高熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感とともに、乾いた咳が出ることが多い。
- 咳は発熱と同時に始まり、数日間続くことが一般的。
流行状況:2025年10月時点で全国的に定点報告数が増加傾向。例年より早い流行入りが確認されています。
咳との関係:気道の乾燥と炎症によって、夜間に乾いた咳が強くなる傾向があります。体力の消耗も重なり、睡眠の質が低下しやすいです。
新型コロナウイルス(ニンバス株)
対象年齢:全年齢(軽症でも咳が長引く傾向)
症状の特徴:
- 発熱、咳、鼻水、倦怠感など。咳は乾性で、長引くことが多い。
- 一部では喉の違和感や声枯れを伴うケースも報告されています。
流行状況:ニンバス株は2025年秋にかけて再び感染拡大中。軽症例でも咳が長引く傾向があり、家庭内での感染も増えています。
咳との関係:夜間に咳が強くなるケースが多く、特に回復期でも咳だけが残る「遷延性咳嗽」が見られることがあります。
夜間に咳が悪化する理由
「昼間はそれほどでもないのに、夜になると咳がひどくなる」——これは多くの呼吸器感染症で見られる現象です。実は、夜間に咳が強くなるのには、いくつかの医学的な理由があります。
1.体温の変化と気道の反応
夜間は体温がわずかに上昇しやすく、これが気道の粘膜に影響を与えます。体温が上がることで血流が増え、炎症が起きている部分がさらに敏感になり、咳反射が起こりやすくなります。特に感染症によって気道が腫れている場合、わずかな刺激でも咳が誘発されやすくなります。
2. 寝る姿勢による影響
横になることで、鼻水や痰が喉に流れ込みやすくなり、気道を刺激します。また、重力の影響で気道が狭くなり、呼吸が浅くなることで咳が出やすくなることもあります。特に乳幼児では、気道が細いためこの影響が顕著です。
3. 空気の乾燥と粘膜の刺激
秋から冬にかけては空気が乾燥しやすく、暖房の使用も加わって室内の湿度が低下します。乾燥した空気は気道の粘膜を刺激し、咳を引き起こす原因になります。加湿が不十分な寝室では、咳が悪化しやすくなる傾向があります。
4. 自律神経の働き
夜間は副交感神経が優位になり、気道の分泌物が増える傾向があります。これにより痰が絡みやすくなり、咳が出やすくなることがあります。特にRSウイルスなどで気道の分泌が多い場合、夜間の咳が強くなる一因となります。
5. 疲労と免疫反応の変化
日中の活動による疲労が蓄積すると、夜間に免疫反応が強まることがあります。これが炎症反応を促進し、咳が悪化する要因になることもあります。子どもは体力の回復が未熟なため、こうした変化が咳に影響しやすいと考えられています。
このように、夜間の咳には複数の要因が絡んでいます。単なる「寝ると咳が出る」という現象ではなく、身体の仕組みと感染症の影響が重なって起きていることを理解することで、適切な対処につながります。
ご家庭でできる対処法
夜間の咳は、子ども本人だけでなく看病するご家族の睡眠も妨げるため、できるだけ早く和らげたいものです。以下に、家庭で実践できる対処法を整理しました。
1. 室内の湿度を保つ
- 加湿器を使って、湿度50〜60%を目安に保ちましょう。
- 加湿器がない場合は、濡れタオルを部屋に干す、洗面器にお湯を張るなどでも効果があります。
- 空気が乾燥すると気道が刺激され、咳が悪化しやすくなります。

2. 寝る姿勢を工夫する
- 枕を少し高めにして、上半身を軽く起こすような姿勢にすると喉への刺激が減ります。
- 乳幼児の場合は、タオルなどで角度を調整し、無理のない姿勢を保ちましょう。
- 横向きに寝ることで、鼻水の逆流を防げることもあります。
3. 水分をこまめにとる
- 咳が出るときは、喉の乾燥を防ぐために水分補給が重要です。
- 寝る前や咳が出たタイミングで、ぬるま湯や白湯を少量ずつ飲ませましょう。
- 冷たい飲み物は避け、刺激の少ないものを選びます。
4. 市販薬の使用は慎重に
- 小児用の咳止め薬は、年齢や症状に応じて使用可否が異なります。
- 使用前には、薬剤師や医師に相談することをおすすめします。
- 特に乳幼児には、自己判断での使用は避けましょう。
5. ご家族の睡眠も守る工夫を
- 看病が続くと、保護者の方も睡眠不足になりがちです。
- 可能であれば、交代制で仮眠をとる、日中に短時間でも休息をとるなど、無理のない体制を整えましょう。
- ご自身の体調管理も、お子さんの回復を支える大切な要素です。
受診の目安と注意点
夜間の咳が続くと、「このまま様子を見ていいのか」「病院に行くべきか」と迷うこともあるかと思います。咳は多くの感染症で見られる症状ですが、重症化のサインや生活に支障が出る場合は、早めの受診が必要です。以下に、受診の目安と注意点をまとめました。
受診を検討すべき症状
以下のような症状が見られる場合は、医療機関への相談や受診をおすすめします:
- 咳が3日以上続き、改善の兆しがない
- 呼吸音がゼーゼー・ヒューヒューと鳴っている
- 顔色が悪い、唇が紫がかっている
- 咳のせいで食事や水分がとれない
- 咳で夜間に何度も目覚め、日中もぐったりしている
- 咳とともに高熱が続いている(38.5℃以上が目安)
- 咳の勢いが強く、嘔吐を伴うことがある
承知しました。では、「夜間や休日の対応について」のセクションを、日中の相談も含めた形で自然に調整いたします。医療機関としての配慮と感染症対策の観点を保ちつつ、読みやすく仕上げました:
夜間や休日の対応について
- 「迷ったら相談」が基本です。無理に我慢せず、専門家の判断を仰ぐことが安心につながります。これらは、気道の炎症が強い場合や肺炎などの可能性があるため、早めの診察が望ましい状態です。
- 夜間に急激に症状が悪化した場合は、**地域の救急相談窓口(#7119など)**に連絡し、受診の必要性を確認しましょう。
- 岐阜県では、症状に応じた相談先や受診の判断に役立つ情報が、県公式サイト「救急安心センターぎふ(#7119)」にまとめられています。
- 発熱や咳、のどの痛みなどの症状がある場合は、夜間・休日に限らず、日中でも事前にお電話でのご相談をお願いいたします。感染症の拡大防止や、適切な受診先のご案内につながります。
- 乳幼児の場合は、呼吸の様子や顔色の変化に特に注意が必要です。
受診前に確認しておきたいこと
- 症状の経過(いつから、どの時間帯に強いか)
- 咳のタイプ(乾いた咳か、痰が絡むか)
- 他の症状(発熱、鼻水、呼吸困難など)
- 家庭で行った対処(加湿、姿勢、水分補給など)
これらをメモしておくと、診察時にスムーズに伝えられ、適切な対応につながります。
まとめ
夜間の咳は、子どもにとっても看病するご家族にとっても、心身の負担が大きい症状です。現在流行している感染症との関連を知り、咳の仕組みや家庭でできる対処法を理解することで、少しでも安心して過ごせる時間が増えることを願っています。
咳が長引く場合や、呼吸の様子に不安があるときは、無理をせず、早めの相談や受診を検討しましょう。日中・夜間を問わず、発熱や咳、のどの痛みなどの症状がある場合は、事前にお電話でのご相談をお願いいたします。
なお、各務原リハビリテーション病院では、初めての方でもご予約なしで診療を受けていただけます。ただし、事前にお電話やオンライン予約をご利用いただくと、よりスムーズにご案内できます。
また、発熱・咳・のどの痛みなどの症状がある場合は、感染予防のため、事前にお電話でのご相談やオンライン予約をお願いしております。お子さまや他の患者さまが安心してご利用いただけるよう、皆さまのご協力をお願い申し上げます。
関連記事
子どもが咳で夜眠れないときはどうすれば?ご家庭でできる対処法 2025.04.25
まだまだ暑い日々、ニンバス株とは?子どもに多い“のどの激痛”に注意 2025.09.04
まだ暑いのに…岐阜県でもインフルエンザ流行中|学校でも注意したい家庭での対策 2025.09.18
RSウイルス流行中!秋に増える子どもの感染症とは 2025.09.24
秋の感染症注意報|インフル・RS・ニンバス株…今年の流行はなぜ早い? 2025.10.07
監修:各務原リハビリテーション病院長 磯野 倫夫
執筆:医療法人社団 誠道会 広報担当